あの人の世界 公演情報 フェスティバル/トーキョー実行委員会「あの人の世界」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    理解できていないのにヴィヴィド
    何層にもなった世界の空気を感じながら
    それぞれの層に浮かぶものが
    そのままの風情でとても瑞々しく
    観る者を取り込んでいきます。

    作者の意図を理解できたとはとても思えないのですが
    にもかかわらず、強く惹きつけられ心を奪われました。

    ネタバレBOX

    それは作り手の心に去来するものの
    とても緻密なスケッチのようにも思えて・・・。

    作者のイメージのなかにカップルがいて、
    作者が向き合った
    「あの人」の内側に去来する
    さまざまなテイストや想いが
    具象化されて伝わってくる感じ。

    爽快にというか心躍るイメージ。、
    夢を観る。
    ビラの女性を探し求める。
    忘れないでいようとする欲望。
    ピュアなものと汚れたもの。
    捉われていく感覚。
    遠くから投げ入れたものがその場所に収まる確率。
    失われていくものへの感情。
    繰り返し・・・。
    などなど。

    舞台の上部のブリッジ部分が
    次第に舞台の世界とリンクしていきます。
    冒頭の端正な墓参りのシーンとは裏腹に
    表層と深層が次第にボーダーを失って
    渾然一体と描かれていく。
    その奥のスクリーンに映し出される女性が
    「あの人」一番外側にあたる源モラルのようにも思えて。

    示唆に溢れた山ほどの表現たち。
    あやふやなミュージカルの完成。
    ビラを配ること。
    首輪で互いにつながれた目隠しの嫁と姑は
    男の家庭らしい
    結びつきながら互いにコントロールしあえない姿に
    女性の生活感が垣間見えたり。
    時間の経過の中で捨て去られたものと
    吊るされたそのぬけがら。
    そして痛み。

    多分作り手が精緻に描きこんだ絵面の半分も
    理解していないのだと思います。
    もしかしたら1割以下かもしれない・・・・。
    にも関わらず、時間を忘れて
    心を強く繊細に共振させる実感を伴った風景が
    恐ろしいほどくっきりと舞台上に見えるのです。
    一番近いのはダリの絵を見たときの感覚でしょうか。
    かかわりのないいくつものイメージがゆるく重なり合い
    一つの形に積み上げられていて。
    気がつけば絵の前で何十分も立ち止まってしまっていた時のような
    あの感覚。

    それはたぶん「あの人」の心に
    日々映し出されている風景の
    模写にすぎないのでしょうけれど、
    そこから見えてくる「あの人」自身には
    自らが「あの人」に置き換わったと錯覚してしまうほどの
    リアリティがあるのです。

    役者たちの動きには切れがあり
    伝わってくる感情がすごく良質。

    満足とか不満足というような切り方で表現できないような
    不思議な満たされ方に
    終演後もしばらく立ち上がることができませんでした。




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    2009/11/13 15:26

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