ナイゲン(R04年新宿版) 公演情報 feblaboプロデュース「ナイゲン(R04年新宿版)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ナイゲン(R4年新宿版)…物語は やはり面白い!
    冒頭は「理屈」で語られるが、だんだんと「感情」が先走ってしまう会議。議論は色々な方向に漂流し何処に辿り着くのか分からない。混迷している様子、それでいて会議全体の流れは分かり易いといった印象であるから不思議だ。
    当初 印象が薄くあまりやる気が感じられなかった議長がその責務を果たそうと…その成長譚が逞しい。文化祭を取り仕切る内容限定会議〈ナイゲン〉は表層の面白さだけではなく、そこに潜む会議体や民主主義の問題を考えさせる。
    物語の面白さは伝わるが、少し勿体ない点が…。
    (上演時間2時間10分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    セットは会議で見かけるロ字型。正面にグリーンボード、その上部に時計がある。上演時間とナイゲン討議時間(下校2時間前の時刻 16:20~18:30)に重ね合わせて臨場感を持たせる。客席はL字に設え、観客には会議の立会人のような緊迫感を持たせる。
    内容限定会議(通称:ナイゲン)は、県立国府台高校 文化祭”鴻陵祭”における各参加団体の発表内容を審議する場である(文化祭規約)。規約が”自主自律”の精神に則っている。この規約が掲載された「内容限定会議資料」(劇中使用と同様)が観客にも配付される。すでに参加団体の催し内容も確認したところに、学校側から「節電エコプログラム」の催しを押し付けられて…。

    発表内容に関する指摘、恋愛(痴情的)感情、上級学年優先や 何となくなど、意味不明の理由まで飛び出し議論は漂流し続ける。始めの理論武装された議論から感情優先のドタバタコメディへ…。いつの間にか文化祭全体会議からクラス代表の顔になっている。下校時刻が刻々と迫ってくる。そんな中、演劇の上演許可を得ていないクラスがあった。ナイゲンの議論は、如何にこのクラスが主体的にエコプログラムを受け入れるか、という話へすり替わっていく。自主自律の精神に沿わせようとするもの。
    教室から出られないという密室状態、しかも会議時間が限られているという空間と時間の制約に緊張が生まれる。テンポ良く、また疾走するような会話劇は、立会人的な観客も固唾を呑んで見守っている感じ。会話劇だけに登場人物のキャラクターや立場などが観(魅)せられるか。個性豊かな登場人物を演じるキャストが変われば劇雰囲気も変わるだろう。内容の面白さは勿論、キャストによって違った印象になるから、何度観ても飽きることはない。

    が、たまたま「R4年新宿版」は長谷川智也サンの代役として、演出の池田智哉さんが1年生・おばか屋敷役で出演している。圧倒的な存在感は、他のキャストと一線を画す。もう一人・どさまわり役の坂本七秋さんも良い。表面的には、はじけた演技だが、何となく こじんまり とした印象だ。全体として、キャストのバランスに違和感を覚えたのが残念なところ。高みに合わせた演技の調和がもう少しほしかった。

    各クラスの発表内容の審議結果を多数決(民主主義的な)で決める。討議では自分の考えを訴えつつも相手の言い分も聞くという態度が大切。物事を決める熟議のプロセスを重視している。意見の一致も大切だが、一人ひとりが違った見方で世界を見ることで世界はまともな形で存在するかも。芝居ではこの役割を3年3組_どさまわり に担わせている。にも関らず、全体討議終了後の採決は全会一致の承認が必要であると…そうであれば議論の過程の多数決は何の意味があったのだろうか、という疑問が生じるところ。
    会議後、花鳥風月(杉浦惇サン)が将来に向けて、皆がやりたがる「エコプログラム」を創作すると…。真に問題が解決した訳ではなく、会議内容の真価はこれから問われるのだと暗示している。実に深い余韻を残しており見事!
    次回公演を楽しみにしております。

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    2022/08/21 14:20

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