実演鑑賞
満足度★★★★
台風直撃にお盆の土曜、ずぶ濡れになりながら地下の小劇場に集った面々。伊藤弘子さんの「お宅らも好きねえ」的ないなせな口上から開幕。主人公・宮崎滔天(とうてん)の妻役・山﨑薫さんとその姉役・伊藤弘子さんの見事な掛け合いで今作の裏事情が語られていく。宮本研の1976年の作品を詩森ろばさんが現代向けにアレンジ。オリジナルを知りたくなる程の大胆な脚色、これを当時宮本研が書いたのなら衝撃的すぎる。
全然難解ではなく娯楽に徹しているので心配しなくて大丈夫。
盟友、孫文(さとうこうじ氏)による清朝政権の武力革命での打破に夢を懸けていた宮崎滔天(シライケイタ氏)。1904年、その夢は破れ浪曲師に転身。桃中軒(とうちゅうけん)雲右衛門(井村タカオ氏)に押し掛け弟子入りし、桃中軒牛右衛門(うしえもん)と名乗る。とはいえ革命の夢を諦めきれない若き中国人達が協力を求めて訪ねてくる毎日。その世話を焼く、妻の槌(つち)とその姉の波。(本当の名前は前田卓〈つな〉、夏目漱石の『草枕』で那美とされているのでこうしたのだろう)。1911年、孫文による辛亥革命が到頭成功するのだが・・・。
さとうこうじ氏は流石。ある種、キーになる役を演らせたら必ず成立させる強さ、凄い力量。
山﨑薫さんのファンなら今作は必見。開幕から終幕まで常に合いの手を入れ続けるような好演。
シライケイタ氏が「誰かに似ているな」とずっと考えていたのだが、IWA JAPANのプロレスラー、松田慶三だった。熊本のお座敷唄「キンキラキン」を木暮拓矢氏と唄い踊りまくるのは名場面。
牛右衛門の弟子、馬右衛門役の星郁弥氏を観るのは今作で三作目、その度にどんどん大物化している印象。一体何処まで行くのか?
各キャストの直筆サイン付き生写真が一枚300円で販売中、要チェック。