蝶々結び 公演情報 LUCKUP「蝶々結び」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    人生の最初にして最大の選択、それを夢想または追想のように描いた物語。一見、抽象的とも思える出だしは取っ付き難いが、少しずつ物語の輪郭を表す。表現し難い内容、それを独特な(不思議)感覚と謎めきをもって描いており上手い。

    実際の 蝶々結び は解けないようで容易に解くことが出来る。この公演のタイトルは意味深で、解けそうで解けない。説明にある旅人・あなたはかけがいのないものを手に入れた は、心の迷い 彷徨から少し解放されたようだが…。

    何故か、ある映画を思い出してしまうのは、線路・冒険・友情といった断片的ではあるが、そこに かけがえのない宝があるからだと思う。
    (上演時間1時間45分 途中休憩なし)
    -monochrome side.-

    ネタバレBOX

    舞台は地方にある木造駅舎。中央は少し高くした1番線ホーム、上手に回って降りてきたところに改札口。上手が駅室、上に時刻表が掲げられている。下手にトイレがあり駅員の使用頻度が高いよう。中央客席寄りにベンチ。上演前から蝉の声が聞こえているから、時季は夏であろう。

    物語は、一人の男が郷里へ帰ってきた、そんなどこでも見かけるような光景から始まる。この街、駅舎に集まる人々は明るく陽気で、屈託がない。歌って踊って、旅人を歓迎しているような光景だが、何となく違和感を覚える旅人。そして久しぶりに帰郷した理由は母からのハガキ。しかし、その家はなく途方に暮れて駅舎に戻るが、終電はなく、駅待合室で翌朝まで過ごすことになる。

    街の人々は、駅員を除けば、高校生の男女4人グループ、医師と看護師、歌う女性。夜にこの人々との不思議な会話や交流が、自分の中の何かを目覚めさせる。昔の記憶のドアをノックされ少しずつ開けた心から見えたものは、今 話し相手になっている高校生と同じ年頃の自分である。何もない田舎町、ここから出て都会(東京)で働きたい、生きたいといった希望を抱く。一方、何ものでもない自分が郷里を出て成功できるのか。端的に言えば、上京するか郷里に留まるのか といった人生の選択に思い悩んだ末に出した結論は…。この悩みは理解出来る。

    東京での暮らしは、必ずしも煌びやかな生活ばかりではなく、孤独に苛まれることもある。そんな思いをして帰ってきた旅人が、今 目の前にいる高校生たちが自分と同じような人生の岐路にいる。何か言葉(思い)を伝えなければ、しかし自分の真意がうまく表現できない。まるで夢の中、もしくは心を閉ざした闇の中にいるようだ。

    整理できないモヤモヤとした気持。謎めきと不思議な世界観を一役二人でしっかり描き出す巧さ。その表現を 高校生グループが、夜陰に乗じて線路を歩いて冒険に出ようとしている。どこか見た光景だが、それこそが自分で過去に経験した出来事。選択した結果の善し悪し、実行して初めて知ることになる。街を出る出ないの選択と決断、その結果を知った後悔の念に苛まれ 心を閉ざした。が、ある切っ掛け(迎えの女性)によって、高校時代の友情や母の気持、そのかけがえのない思いを知ることになる。そんな描き方で心の内を具現化してみせる。それこそが答えのような…。

    何となく、映画「スタンド・バイ・ミー」を連想してしまう。田舎町、線路を歩く冒険、なにより友情を深める。その体験を追想する滋味溢れるところが重なる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/08/12 19:33

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