コンプレックスドラゴンズ 公演情報 The end of company ジエン社「コンプレックスドラゴンズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    閉塞感の中にあるもの
    久々に観たがやはり面白かった。
    開演前から登場人物が舞台にいて動いているのは青年団と
    似ている。TVニュースで諸注意を流すなど洒落た演出だ。
    登場人物は各自、自己主張するばかりで会話は成立しない。
    何を言っても何を言われても互いに受け止めようとしないので、
    軋轢も生じないのである。
    極端なようだが、現代日本の縮図のようでもあり、じわじわと
    怖さが迫ってくる。
    難しい問題は避けて先送りし、目の前のことにだけ関ろうとする。
    無関心を装っても、他者の目や自分の立場を実はとても気にし
    ている。
    何とも言えない閉塞感のなかで他者との距離を取りながら
    必死に自発呼吸しようともがいているわれわれの姿を突きつ
    けられるような問題作だった。
    また、作者本介氏自身の演劇における疑問や焦燥感も感じられ、
    興味深い。

    ネタバレBOX

    傷害事件がおきても「身内以外にだれにも迷惑かけてないよね?」
    と確認し、出血多量の仲間を見ても「本人が大丈夫と言ってるから」
    と放置する。
    師匠の孔子先生の安否も何かあれば連絡が来ると楽観視。
    自分に関係あるかどうかだけで判断しようとする傾向は最近の若者
    によく見られる。
    企業が新卒の求人条件に判で押したように強調する「コミュニケーション
    能力に優れた人」、その対極にある人物を描いて興味深い。
    ミサイルが撃ち込まれた、戦争が起きているといっても他人事で、
    ろくにルールも知らないメンバーを集めて草野球の試合を開くこと
    のほうを優先する芸人たち。
    湾岸戦争が起きたとき、シミュレーションゲームを見ているようだと
    多くの識者がメディアで発言したことを思い出す。
    芸人アオガクの女装は、何をしていいかわからず捨て鉢になっている
    様子をよく表現している。彼がネタを披露しようとして孤独と挫折感
    に襲われる心象風景を照明で表現した場面が印象的だ。
    孔子先生がかなり面白そうな人物で登場しないだけに想像が膨らむ。
    以前の作品でも向こう岸にニート村ができている設定が出てきたが
    今回も向こう岸(東京)の話が出てきて、作者本介氏の作品の象徴に
    なっているのだろうか。
    アンケートの中に性、暴力描写、舞台での喫煙についてや、不快感を
    覚える表現への設問があり、制作側が具体的な質問を観客に投げ
    かけるのが珍しく、有意義な試みだと思う。
    ちなみに、私は今回、舞台で役者が喫煙した場面の直後、咳が出て
    焦ってしまった。席が離れていても、密室では気管支が敏感に反応
    してしまう体質なので辛かった。

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    2009/10/26 19:56

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