月の金魚 公演情報 鵺の宴「月の金魚」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    抒情的な…。
    物語は、二重構造の恋愛ものらしい。直接的には、訳あり女性と神社の青年の恋物語、そして女性に宿る恋を成就させる魂(金魚)が織り成す ちょっぴり切ない思い。しっとりとした和風 静かな流れの物語だが、人は、時に激しく燃える想いを抱くことがある。全体的に纏めたといった印象が強く、もう少し刺激的に描いても好かった。
    (上演時間2時間10分 途中休憩なし)
    【金魚チーム】

    ネタバレBOX

    舞台セットは、場面毎にいくつかの衝立等を搬入し情景描写をするが、基本は変わらない。上手に高さある台(天空イメージ)がある。下手は神社の柵や腰掛が置かれているシンプルなもの。神社には本殿とは別に小さな祠があり、縁結びの神様が祀られている。お参りした人が縁あって「恋」をすると、その人の心に”恋の金魚”が生まれ(芽生え)る。金魚はふわっとした赤い衣装(鰭イメージ)で優雅に踊る様が、ゆったりと泳いでいる感じだ。

    目の手術後、療養のために母親の田舎に両親とやって来た主人公・静月(西条美咲サン)が、"小さな祠"に参拝を終え 帰ろうとした時、神社の次男で跡取り(仮)息子・宵乃亮(村田直樹サン)に出逢う。
    静月の心に宿った金魚(松井珠紗サン)は、宿主の恋において一心同体。金魚は宿主の恋が”叶う”ように願い、育てていくのだが…。ちなみに静月が自分の恋心の化身でもある金魚と向き合う時は白い衣装。舞台上で女性二人が白・赤の衣装で戯れる様子が いじらしく も美しい。

    静月は視覚障碍者という設定であるが、弱視で少しは見えるという。その世界は灰色で、逆に夜の暗闇のほうが見えるという。本来見えないものが見えるという、独特の世界観の表現だが、塞ぎ込んでいた気持を素直に表している。宵乃亮との語らいによって、彼の優しさや気遣いに触れて恋心が芽生えるが、同時に 自分が障碍者で同情されている、のかといった疑心暗鬼な気持ちになる。一方、宵乃亮は自分の気持と向き合わず、何事にも逃げようとする。その優柔不断な態度が静月の心を搔き乱す。そして金魚も宿主の恋する相手を見てみたいと願うようになり、恋の不可思議な様相を呈していく。そして神社の祭りの日に起きる出来事が少し切なく…。

    登場人物は全て善人。時にちょっと意地悪をしたくなる気持もあるが、そこが人間らしくもある。その行動が思わぬ波紋をひろげるが、同時に自分の正直な気持に向き合う切っ掛けにもなる。縁結びの神様と金魚の遣り取りも絡んで神秘的で抒情的な作風に仕上がっている。また音響では心情や状況の変化の際には水滴が落ちる効果音、照明は目つぶし的な照射によって場転換を容易に行うなど、舞台技術の工夫も好ましい。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/07/09 10:39

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