室温~夜の音楽~ 公演情報 関西テレビ放送「室温~夜の音楽~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ケラ独特の恐怖と笑いとナンセンスの不条理劇だ。これほど、Absurdを「不条理」と訳した訳語の生硬さに辟易する作品はない。馬鹿々々しい話だし、出てくる人間も皆いい加減、事件もまさかの展開だが、どこか人間の真実を衝いているところがある。ぞっとして笑ってしまう。
    21年前のケラの作品で鶴屋南北賞や読売演劇大賞を受賞した作品と言うがすっかり忘れていた。ケラ作品は東宝が旧作をクリエで新しい若い演出者で年一本上演していて、新しい発見のある面白い企画になっているが、これは関西のテレビ局の制作、演出者は河原雅彦。初演は「フローズンビーチ」の大ヒットの後、急上昇中だった三十歳半ばの作者の戯曲によるナイロンの俳優たちの舞台も想像できるが、今改めて、河原雅彦の演出でこの作品を見ると、ケラ・ナンセンス劇-の特質が出た戯曲の良さがよくわかる。ことにその戯曲展開の用意周到さ。リアルとの距離感も絶妙である。
    今回はファンクバンドの在日ファンクが音楽を担当していて(金管3名、リズム3名、浜野謙太は大きな役で出演もしている)挿入された楽曲は五曲、河原雅彦上演台本によるナマ音楽劇になっている。これも戯曲に華を添える出来で新しいケラ作品の魅力になった。この手で再演してほしい作品は幾つもある。
    俳優は、ケラーナイロンにはあまり縁がなかった人たちだが、地道にうまい。インチキな霊言で商売をしている中老の男(堀部圭亮)も、同居しているその娘で、姉を若者グループに虐殺されている妹(平野綾)、十年の刑期を終えて出所して線香を上げに来るその犯人の一人(古川雄輝)、何時も入り浸っている警官(臺蔵由幸)や。道が分からなくなってやってくるタクシー運転手(浜野謙太)が戯曲を忠実に追っていて、それでいて俳優個々の味も出していて面白い.縁のない俳優で演じられた無残な作品も見たことはあるからだれがやってもできるという本ではないが、俳優も演出もよくこの作品を一本の作品にまとめ上げている。
    残念ながら世田パブで入りは1階が八分。「キネマと恋人」ではチケットがなかなか手に灯らなかったが、今回はサービス券やリピート券がほぼ三割引きで出ている。毒気満々だったケラの本領の分かるすぐれた公演ある。

    0

    2022/07/06 10:29

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大