ディグ・ディグ・フレイミング! 公演情報 範宙遊泳「ディグ・ディグ・フレイミング!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    久しぶりに、いまの世間が丸ごと舞台に乗っているのを見た。旬の若い演劇人の舞台で、今年の岸田戯曲賞の作者も劇団範宙水泳(作者は座付きのようだ)もはじめて。
    素材は、今を流行りのSNS。「MenBose─男坊主─」という男性グループインフルエンサー たちの言動の謝罪を巡る騒動を描いていく。舞台中央にスクリーンを模した通り抜けできるパネルが張ってあって、そこに、タイポグラフィーで様々な文字が出る。内容はほとんど読み取れないが大きくシーンが変わるたびにそのシーントップのクレジットは出る。シーンは全部で十数シーン。なにが世間を怒らせ謝罪しているのか深くは掴めない。ただ形だけ謝っているようにしか見えないが、内容が空疎なものにしか過ぎないことも、しかし、中には重大なことも含まれていそうなこともわかる。後半になると引きこもりの一人の少女(亀上空花)とその母(村岡希美)への誹謗中傷に絞られていく。その経緯は男坊主四人の踊りとも演技とも芸人芸とも決められない早い動きとセリフで語られるのだが、見ている間は面白く笑ってしまうのだが、すぐ忘れてしまう。こういうところが実に今風で、世間を衝いている。
    舞台構成には、若者得意の音楽はもとより、マッピング、タイポグラフィーや九州のかぶりもの劇団の手法まで取り入れ、舞台面は極めて賑やかな早い進行で、上滑りしていること自体が狙いなのだが、稽古はよく行き届いていて95分、全く隙がない。客演の村岡希美が見事な抑えになっている。
    今年のベストの一つに上げられる舞台だろう。
    一つだけ異見を言えば、タイトル。「ディグ・デイグ・フレイミング」のディグは、そのままでもほとんどの人は理解できるだろう(作中でヒントもある)が、フレイミングには英二文字目、rもlもある。ともに名詞母語から動詞、副詞、形容詞などにも使われている。しかし日本人にはどちらも同じ「レ」だ。どちらを取っても、意味は分かるが、その内容はかなり違う。英語生活圏で生活したことがないし、使ったこともない言葉に確信が持てない。これは多くの日本人が同じだろう。その二重性も狙いだと言われれば、随分手が込んでますね、と言うしかないが、それが、「ロボットではありません」と言う副題にどうつながるかも、作者側のお答えは欲しいところだ。それが、ご覧になった方のご自由に、となってくるとこの現代の荒廃は堂々巡りで際限なくなってくるので、まさか作者はそうは思ってはいないだろう。

    又。この五つ星おすすめは、ことに若い方に。同時代演劇を持つことの幸せを!

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    2022/06/30 11:14

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