ただちに犬 Deluxe 公演情報 劇団どくんご「ただちに犬 Deluxe」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    旅芸人
    半年かけて、全国津々浦々を旅して回る、本当の意味での旅回りの劇団。地元と交渉して場所を確保してテントを設営。公演日数はせいぜい2日。そしてまたテントをたたんで移動。
    芸能の原点というと大袈裟だけど、同じテント芝居でも都内を中心にやっている唐組や新宿梁山泊とは一味違う。フェリーニの映画「道」に出てくる3人だけの旅の一座を思い出したくらい、どこか素朴さを感じさせる上演形態。まあさすがに、あの映画ほどわびしくはない。全体にこぢんまりとした作りだが、赤を多用した飾りつけや、ラテン音楽を中心にした陽気な音楽、それに役者も少数精鋭の芸達者が揃っている感じ。

    ネタバレBOX

    サッカーにはそれほど興味がないので、埼玉高速鉄道の終点、浦和美園駅に降りるのはこれが初めて。駅前広場が会場と聞いていたのですぐに見つかるだろうとタカをくくって正確な場所を確認しておかなかった。そしたら案内の張り紙もなく、それとわかるノボリなども見えなかったので最初はちょっと心細くなったが、よく見ると広い空き地の隅にそれらしき建造物を発見。
    予想したよりも小さなテント。木造の舞台の広さは6畳か8畳くらいだろう。開演前は白い蚊帳や垂れ幕のほか、赤い派手な飾りがいくつも吊るしてある。風の強い日でそれらが盛んになびく。芝居が進むにつれて徐々にそれらは取っ払われていき、最後には短い草の茂る空き地と、その向こうにある大型スーパー、イオンの建物が舞台の背後に現われた。

    役者は5人。いずれもコミカルな扮装をしている。
    始めと終わりに音楽の演奏があり、そこでは全員が楽器を持つ。下手で音響操作をしているスタッフ二人もこのときは舞台に上がった。
    そして肝心の芝居のほう。チラシを見ると、構成・演出を担当する人はいるが、脚本家というのはいないようだ。構成は5人が全員で演じる場面と、5人が一人ずつ登場して演じる場面に分かれている。全体を通しての大きなストーリーはない。
    5人が全員で演じる場面は、ある設定のもとでエチュードをやりながら作ったのではないだろうか。具体的には、大きな犬のぬいぐるみを死体に見立てて、刑事が事件を推理して、最後に「犯人はお前だ」と誰かを指差す。ドラマの見せ場といっていいこの短いシーンだけを切り取って、犯人と刑事の役を次々に入れ替えながら、いろんなヴァリエーションをどんどん重ねていく。ストーリーを追おうとするとわけがわからなくなるので、早めに頭を切り替えて、役者たちのノリのいいパフォーマンスを楽しむ方向で眺めたほうがいい。
    5人の役者が単独で演じる場面は、いわばそれぞれが単独ライブをやるような心意気で、たぶん演目も役者自らが考えて作ったのではないだろうか。

    この劇団にいれば役者は鍛えられるだろうなあと思う。楽器も演奏しなきゃならないし、一人で舞台に出て一定の時間を持たさなきゃならないし、本番でも即興が入るみたいだし、踊ったり歌ったりも求められる。

    役者たちは汗をかいていたようだが、この日は本当に風が冷たくて、ひざ掛けの毛布が配られたものの、これからの季節、テント公演なので、防寒対策はして出かけたほうがいい。

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    2009/09/21 09:39

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