化粧二幕 公演情報 劇団ドラマ館「化粧二幕」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2022/06/18 (土) 18:00

     劇の冒頭で、大衆劇団「五月座」の女座長五月洋子が主人公で、もう壊されてその跡地にマンションを建てることが決まっている劇場で最後の公演を打とうとしている、その公演日当日の本番が始まる前の寂しい楽屋が舞台となって話が進んでいくことが分かってきて、劇の最初のほうで主人公がさり気なく、今どういう状況なのかということや、劇の中で起こっていることを丁寧に説明するあたり、一人芝居ならではの醍醐味だと感じた。
     劇の途中から、五月洋子が赤子のうちに捨てた息子が有名タレントとなって帰ってきて、親子の溝も溶けたかに思えた瞬間、実はそのタレントの実の親でも何でもないことがわかり、それでも公演を続け、劇中で演る劇の内容とシンクロしていってハラハラドキドキさせ、感動の展開かと思ったら、どんでん返しが待っているという、話が二転三転していく先が読めない展開に見事なドラマだと感じ入った。
     最後の場面で、取り壊し工事の音がうるさく響き渡るなか、五月洋子が何かに取り憑かれたかのようになって、大衆演劇で演じる渡世人の台詞と洋子自身の経験を語る台詞が交錯し、五月洋子が芝居狂か、はたまたかつて大衆演劇を演っていた寂れて、今まさに壊されている渦中の芝居小屋の魂が具現化して、亡霊として彷徨い続けているかのような、気迫のある、それでいてどこか諦めや醒めた感じも含む終わり方に、どこかリアルなところがある気がして、なんとも言えない苦く、侘しく、重苦しい風に感じた。
     
     役者であるあべ敬子さん演じる五月洋子が、これは一人芝居ならではの限界である出ずっぱりなのを逆手に取った自虐ネタや、少ないが個性的な舞台には実際には登場しない役者に稽古を付ける際のボケ、ツッコミの巧みさ、スタッフとの噛み合わないやり取りによる笑いなど、劇全体を通して飽きず、軽快なノリに思わず笑みが溢れた。
     役者あべ敬子さん演じる五月洋子が舞台上でいきなり化粧を始めて、それも鏡を見ずにやっているものだから、ところどころおぼつかないところがあって、急にお客さんに化粧のデキを聞いたりしているところが、コミカルでもあり、それでいて、妙な生々しさがあった。
     そして、化粧前とは打って変わって、化粧後は大衆演劇でいかにもよくいそうな男前な顔になっており、唖然とした。

     私は今まで、いろんな芝居を見てきたが、一人芝居というのは初めてだったので、どんなものだろうと期待と不安でいっぱいだったが、予定調和的過ぎる笑いの場面もあったが、そういう部分を除くと、思ったよりも大変面白かった。ただし、芝居は一人より10~20人ぐらい、最低5人ぐらいは役者がいないと、やはり寂しく感じるところもあった。

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    2022/06/18 23:54

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