異邦人~エトランジェ~ 公演情報 シンクロナイズ・プロデュース「異邦人~エトランジェ~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    高度な異質さ
    ひじょうに素敵な作品でした。演出・照明・音楽、どれをとってもセンスがいい。舞台は無機質な、どちらかというと淡白なセットなのに照明で更に幾何学的なラインを作り出し、更に音楽で盛り上げるという視覚も聴覚も満たされた芝居。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    いきなり白いマスクを被った妖しい輩が登場。彼らは口々になんやら他の惑星かr来たような濁音を発する。クチャクチャ・・・カツカツ・・・みたいな・・。異様な雰囲気で始まったその舞台に直に呑まれる。
    やがてそれは後半の展開から陪審員だったことが解る。

    ムルソーのママン死んだ。しかし彼は涙も見せず淡々と埋葬を済ませ、翌日には海へ行き彼女と遊び喜劇映画をみて、SEXをした。いつものように勤めに出て何も変わることはなかった。そして知人が付き合う情婦に手紙を代筆したことが原因で諍いになり情婦の兄をピストルで撃ち殺した。ムルソーが死刑判決を言い渡されるまでの物語。

    ムルソーの持つ独特の倦怠感、相手のことを必要以上に詮索しないし、自分のことも必要以上に話すこともしない。そういうことに意味はない。と思っている無関心さの表現が実に上手い!彼女との情事でも単に一緒に居て息をしている関係のようなものだ。何も求めないし何も与えない。世の中というものに何も期待していないようだ。それでも精神を破綻させることもなく、淡々と日々を過ごすムルソー。いつもひどく怜悧な目をして落ち着きはらったその視線の先は何が見えてたのか・・・。
    およそ何の感情も浮かべていない。その本質までは理解できないが、「生きることは死ぬことと同じだ。いつ死んでもいい。」と彼の叫びが聞こえてきそうだ。その暗さとクールさにぞっとしながらも、独特の世界観に惹かれた。

    裁判中でもその姿勢は変わることなく、尋問にも今の気持ちを正直に話してしまう。それらに関心を抱く事もなく、いっさい無意味だと悟ってしまう。だから検事の尋問に「悔いるというよりもうんざりしている。」と言い放つ。
    そして、それらの言動や証言から彼への評価は悪い方向へと水は流れ死刑判決がおりる。後半部分での司祭とムルソーの掛け合いが絶妙!

    「ゆっくり行くと日射病になってしまう。けれど急ぎすぎると汗をかいて教会で寒気がしてしまう。」ママンがムルソーに教えた言葉がジンと沁みた。

    ポップな音楽に乗せて美しく哀しいカミュの代表作をセンスのいい舞台に仕上げてた。雨の音もいい。みんな、いい仕事するなぁ・・・。






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    2009/09/17 12:38

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