高島嘉右衛門列伝3 公演情報 THE REDFACE「高島嘉右衛門列伝3」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    前作「七慟伽藍 其の二十八」に続いての朗(活)読劇、その面白さを再び味わった。
    高島嘉右衛門列伝となっているが、単なる個人史ではなく、幕末という動乱期に活躍した勤王志士たちとの交流を通じて、彼のトピック的な出来事を綴る物語。本公演は列伝3~横濱の龍神~乾惕編になっている。帝王学の書「易経」では、龍の成長(6過程)物語を取り上げた入門的解説の3番目が、乾惕(けんてき)である。カーテンコールで榊原利彦氏が、列伝4を行うと明言したのもそのためだろう。
    なお列伝1、2は、冒頭に概要が説明されるので、列伝3だけの単独公演でも困らないし十分楽しめる。

    さて少しネタバレするが、物語は1866年11月に横浜関内で発生した火災(豚屋火事)後から始まる。ちなみに豚肉料理店から出火したためこう呼ばれているらしい。横浜開港から7年目の関内を焼き尽くした。関内の復興に尽力したのが、この地名「高島」にもなっている嘉右衛門である。
    冒頭、鼓舞するような勇壮な音楽が流れ、その音響を背景に役者が語り始めるが、音声(台詞)も音楽に負けないぐらい迫力がある。台本を持ち、舞台上を歩いたり座ったりして情景や状況を補足する。読み聴かせる力量と熱量に魅了される。
    (上演時間2時間 途中休憩10分含む)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に少し高くした平台、その上に大きな生け花風のオブジェが置かれ圧倒的な存在感を放っている。その両脇に椅子、そして上手下手にも椅子がある。役者は舞台を行き来したり、花がある所の椅子に座り、場所という空間の違いや情景・状況といった光景を観せる。シンプルな舞台セットだが、もともと朗読劇であり 多くの身体表現はしないから良く出来ている。

    前半は、薩長連合による討幕の話。特に長州藩・高杉晋作を中心とした明治維新という動乱の中、高島嘉右衛門が果たした役割が紹介される。列伝となっているが、あくまで志士たちと知り合いであり、表舞台での活躍とは言えない。むしろ休憩後の後半、明治維新後の新政府との関わりに高島の人間性が表れてくる。商才に長けていたこと、巨万の富を得るが、欲得だけではない懐の深さを描く。それが東京・新橋と横浜を結ぶ鉄道敷設に関わる契約の件ー先方が高島個人と新政府の両方と契約(ダブル・スタンダード)したことで自ら身を引き、他方 海面埋め立て工事を請け負ったこと。また旧南部藩の借金減免を新政府に嘆願助力したことを熱く語る。

    さて「高島嘉右衛門」が最初の朗読劇であれば、もっと満足度は高かったが、「七慟伽藍」を観劇しているため、どうしても比較してしまう(満足度のハードルが上がった)。
    まず「七慟伽藍」は戦国時代に生きた武将の怨念の語り、そして「本能寺の変」の謎といった「時代の流れ」の中で人間を描いている。
    一方「高島嘉右衛門」は、何回かに分けて高島個人のトピックや、同時代の人物との交流を時代に沿って順々に描く。「(明治)時代の黎明というか息吹」が細切れになり、時代のうねりというダイナミックさが十分伝わらないところが残念。これが1~2公演で「高島嘉右衛門列伝(全編)又は(前編/後編)」を上手く纏めることが出来れば、更に時代の流れの中に高島の偉業が(次々)表れ魅力ある人物像が立ち上がると思うが…。

    勿論、役者の演技は1人ひとり登場人物の特徴(容姿も含め)らしきものを捉え、物語の中で生き活きと描き出している。衣装…男優陣は黒っぽい上下服に同色シャツ、女優陣は着物姿といった外見上はほぼ同じで、あくまで朗読・演技の中で個々の力を発揮している。男優は汗が流れるほどの熱演、女優は妖艶さを漂わせた、見事なバランスで観(魅)せている。
    次回(続編)公演も楽しみにしております。

    0

    2022/06/11 17:47

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大