神様はいない(公演終了・ありがとうございました・御感想お待ちしています) 公演情報 MU「神様はいない(公演終了・ありがとうございました・御感想お待ちしています)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    舞台の空間、舞台と観客との間にある「虚無」
    前回の公演は、会場のサイズと1本の上演時間の短さで、凝縮され、こちら(観客)側と舞台との一体感を強く感じたのだが、今回はそうではなかった。

    クールなのだ。

    いい意味でスカスカ感、冷めた感が漂う。「虚無」とも言えるその感じ。それはまるでエーテルのように存在する。その感じは、演出によってコントロールされたものだと受け取った。

    80分なのに短編を観たような印象。

    演技がきれいに流れていかないところに、少し苛立ちを感じたが。

    ネタバレBOX

    作家である女性の熱が、兄弟や恋人、宗教関係の人たちのヒートアップに比べて、徐々に冷めていく。それはまるで諦め、というより諦観の域に達しそうである。

    新興宗教「自由の会」も、カジュアルという名目で、神すらいない。というより、持ち回りで神(の役?)になるという。
    宗教活動・勧誘に熱を帯びているし、入信する作家の兄たちも熱心なのだが、その本体・本質が、空しいのだ。

    書きたい小説を出版するために、マーケティング的に魂を売って、書きたくない小説を書く女性作家。しかし、その新しい小説は出版されそうにない。
    母の記憶と足の不自由さ。どちらも単に心のキズとは言い切れない、本人にもたぶんわからない深さがある。

    個人的な恨みを晴らすためにテロを考えている外国人留学生。しかし、それがどれぐらい本気なのかは計り知れない。彼は、女性作家が信じる「神」を守るために罪を犯してしまう。彼はイスラム教徒なのに。

    女性作家と付き合っているはずの出版社の男は、最近その作家が相手にしてくれないことを嘆く。
    女性作家を密かに思う大学生のバイトは、その作家には付き合っている男がいることを知っている。しかし、教団に潜入してまで、作家に尽くす。
    2人の男は「愛」という実感を求めているのだが、そこには「愛」という言葉さえまったく存在しない。
    女性作家は外国人留学生と関係を持つが、「愛」があるとは思えない。朝、同じ蒲団から起きて「すみません」と謝る留学生にもそれはない。

    兄が継いだソバ屋は商売がうまくいかない。下の兄は、外国をふらふらしていて、とりあえず帰って来て、ソバ屋を手伝っている形をとっている。そして、初版しか刷ることのない小説を書いている妹(女性作家)。

    閉塞感の漂う中に、空しく光るのは、新興宗教「自由の会」のみ。商店街や警察までに信者を確実に増やしている。

    空しい心を埋めるのは、「神」なのだろうか。「神」しかないのだろうか。
    作家の女性が信心しているのは、お守りの形をした「母の記憶」だったのだろうか。

    どこにも誰にもよりどころがなく、よりどころとしてすがりついたものの正体は、「空(くう)」だった。

    タイトルですでに答えが出ている舞台。観終わって、新宿の街に出ると薄ら寒い。それは、秋になったから、というだけではないのだろう。

    しかし、本作の説明にある「胸がざわざわするハートウォーミングストーリー」とは、一体どこで上演していたのだろうか?

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    2009/09/11 04:22

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  • コメントありがとうございます。

    どうやら私の感じたものは、意図されていたものと近かったようですね。確かに今回もコミカルなところもありましたが、前回観たものとのギャップがあり、それを考えつつ、これはそういうことなのだ、と感じたわけです。

    >ぼくにとってこれが「胸がざわざわするハートウォーミングストーリー」なんです。

    なるほど! 言われてみれば、なるほどです。
    それは理解できますし、思い当たります。今回拝見して、このクールな感じこそが、本質的にお持ちになっていることなのだろうと感じました。
    それは、前回を振り返ってみてもそう思います。あの共同生活の中心にいた女性の心の中は、今回の女性作家に近しいということもあります。・・・ハセガワさんは、そういう女性を繰り返し描くということは、やっぱり、タイプってことなのかもしれませんね(笑)。

    それと、ハセガワさんは、集団心理というか、善意の顔をして、無自覚に徒党を組むことに嫌悪感みたいなもの(恐怖心かもしれない)を感じているのではないかとも思いました。被害者の会とかもそうでしたし。

    それにつけても、もう1本のほうを観に行けなかったことが悔やまれます。あちらはもっとポップな感じがしてますし。

    2009/09/13 16:56

    たびたびありがとうございます。本日千秋楽です。一言だけ伝えたくて再度コメントをば。
    「胸がざわざわするハートウォーミングストーリー」は、ぼくにとってこれが「胸がざわざわするハートウォーミングストーリー」なんです。本当なんですよ。笑

    また公演後に書きに来ます。失礼しました。

    2009/09/13 09:54

    ありがとうございます。MUのハセガワです。伝えたいメッセージが届いていて本当に嬉しいです。普段、コミカルな要素が多いMUで、どこまでやれるかという挑戦でしたが、初日の拍手の音や、アンケート、そしてアキラさんのレビューなど拝見して伝わってるんだ、と嬉しくなりました。すっごい嬉しいです。

    初日なので緊張気味な箇所もありましたが、流れるようにあのラストまで持って行くように頑張ります。また公演後、ネタバレトークを書きに来ます。

    ありがとうございました!

    2009/09/12 10:16

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