しゃぼん玉 公演情報 劇団文化座「しゃぼん玉」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2022/06/09 (木) 14:00

    座席1階

    乃南アサの小説の舞台化。初演は2017年で、劇団代表の佐々木愛は、映画もあるけど舞台化するのに躊躇はなかったとパンフレットで書いている。文化座としては三度目の上演となる。
     
    父親のDVもあって両親が離婚し、何をやってもうまくいかず自暴自棄になって、ひったくりなどを繰り返して各地を流れていく青年が主人公。運転手に刃物を突き付け無理やりヒッチハイクをしたものの、うっかりウトウトした隙にトラックから蹴落とされ、山深い奥地をさまよう。ここでたまたま遭遇した、バイクの単独事故を起こした老女を助けたことで、この老女の家にしばらく居つくことになる。三度のうまい飯と、高齢者ばかりの村で頼りにされる体験などが、少しずつこの青年を変えていく。

    小説を読んでいないと、この物語の結末、つまりこの青年の行く末がどうなるかを舞台を見ながら思いめぐらすことができる。自分としては、ハッピーエンドでよかったと胸をなでおろした。この青年が負っているそれまでの人生での自己肯定感の低さは、相当に深い。だから、また元の「しゃぼん玉のように漂って消えてしまう」人生に戻ってしまうのではないかとハラハラするのだ。そんな思いで舞台に見入っていると、休憩含めた3時間も余り長く感じない。

    劇中、佐々木愛がさっそうとスーパーカブにまたがる場面を見た時は本当にびっくりした。もうすぐ80歳の女優さんのこの姿に勇気づけられた客席の高齢者も多かったはずだ。やっぱり文化座の佐々木愛だ。人生100年時代というけれど、いくら経験と鍛錬を積んだ女優とてなかなかできることではない。山村の村では90歳を過ぎても元気に畑を耕し、近所の人に助けられながらも独居で生きる人(特に女性)は少なくないと言われるが、こうした役柄を演じさせたらこの佐々木愛という女優の右に出る者はいないだろう。

    ただ、演出には少し難が。まず、この主人公の青年に語らせるモノローグが長いのが気になった。むしろ、ナレーションを別につけた方がよかったような気がする。もう一つ、舞台転換では可動壁に平家落人の村、椎葉村のお祭りなどの映像が映し出されるが、この壁を動かすときのゴーっという音が少し、気が散る。村のおばちゃんたちなどを含め、役者たちの輝きは本当によかったのに、少し残念ではある。

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    2022/06/09 21:38

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