奇跡の人 公演情報 ホリプロ「奇跡の人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    素晴らしいの一言。「ウォーター」で遂に言葉をつかむラストは知っているのに、実際その場面を目の当たりにして涙が止まらなかった。平祐奈さんの、渾身の演技に拍手。
    初日のヘレンのカギ隠しのいたずら、食事のマナーをめぐって等等、アニーとヘレンの格闘がどこか可愛げがあるのは、やはりヘレンが子供だから。もっと深刻に救いもなくやることもできるが、子どもの現実からはずれるだろう。

    高畑充希も素晴らしかった。かつては大竹しのぶの当たり役だったが、高畑は若い分サリバンに近いメリットがある。一途さと一種の無鉄砲さと一抹の不安と、つらい生い立ちの影と、そして最後はとにかく「あきらめない」強さと、すべてを体現していた。(ちなみに30年前、大竹しのぶと荻野目慶子の日生劇場での舞台を見たが、すっかり忘れてしまった。今日は全く先の分からない、初見のような新鮮さだった。)
    村川絵梨も大好きな女優さんである。いつもはおてんば的な役が多いが、今回は上流家庭のマダム。スッとした立ち居振る舞いに自然な気品があってよかった。

    と、こう見てくるとこの芝居は女で持っている。では男はというと、実は父と子のドラマがサブストーリーになって幅を広げている。強い父とふがいない息子という「セールスマンの死」からジェームズ・ディーン、「スター・ウォーズ」まで繰り返し描かれるアメリカ的主題だ。

    アニー・サリバンがハウ博士の報告という「バイブル」に従って実践しているというのは、知らなかった。実際にハウは盲ろうあの女性に言葉を獲得させた実例が先にあったと、プログラムで知った。ただの一生けん命の成果でなく、先人の残した「バイブル」をよりどころにした科学的「奇跡」。

    思うのだが、思想の創設者とその継承・実践者の関係は、論語、キリスト教からマルクス主義まで普遍的なものだ。演劇という「メディア」そのものが、作者の思想を俳優という実践者が演じて、観客に伝える構造を持っている。「奇跡の人」もアニー・サリバンという「メディア(仲介者)」の重要性を実証している。(最近、演劇の「メディア」性を考えていたので、自己流の突飛な感想ですいません)

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    2022/06/05 00:49

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