旅と渓谷 公演情報 スリーピルバーグス「旅と渓谷」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    楽日。遅い時間帯と低価格で一風変わった試みだろうと推測されたが、永福町駅施設の「屋上」に昇って漸く様子が知れた。リュック一つで身軽に移動、出張公演が出来るスタイル、という。砂場を囲うように地べたに照明数台、それを近巻きに囲って椅子が置かれている。時間帯が遅いのは照明変化が「効く」環境のためだ。男優と舞監?が客いじりしながらの開演待ちの間、ドキドキの懸念要素は「雨」、開場前から「本日雨の予想」とアナウンスしている。既にポツリと来はじめており、階下のダイソーにレインコートが売っていると案内があり、買いに行く。聞けば前日は途中から土砂降りの中での上演となった由。雨具の付け方のワンポイントレクチャーなどで非日常の気分、子ども連れが居たがはしゃいでいた。ズブ濡れになる不安と、「自分一人じゃない」心理から来る妙な一体感の中、野外公演が始まった。
    出演者は4名(男3女1)、内2人がポータブルカセットデッキを肩から下げ(雨なのでビニールで覆っている)、場面になるとカセットを入れ替えて流す。照明にはフタが付いており、場面転換時に俳優が開けたり閉じたりする。
    上演は一時間弱、その場所を「渓谷」に見立て、旅する者、旅人にたかる者が共闘的だったり敵対的だったりな干渉をし合うが、ロードムービー的なのは脚本それ自体。背景の見え方が少しずつ変わる。当てのない旅と見えていたのが、渓谷は終点と起点(下流と上流)を行き来するだけの閉じた世界となり、最後には終点(河口)に着いたら「ある旅」への出発という別のミッションが現われ、往復する場所でもなくなる。思いつくままに書かれた緻密とは言い難い脚本は、役者の絡みを優先した野外用短編劇。カタルシスは用意されるが、演劇芸術の質を測る「統合」の要素が希薄であるのは惜しい(要は筆の成行き任せで伏線が効いていない)。
    今回の着想は以前夢の島あたりでやった野外劇「南の島に雪が降る」(ベッド&メイキングス)で屋外ならではの趣向の舞台を作った福原氏によるものだろうか。一つの試みではある。
    表現形態の拡張の時期は、何と言ってもアングラ時代だが、当時は時代へのスタンス・思想と上演形態・表現形態が不可分であったのに対し、現在はコロナに起因する「形式の模索」の域を出ない気もする。

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    2022/05/30 08:46

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