実演鑑賞
満足度★★★★★
2回の休憩を含めて3時間半の長丁場だが一度も居眠りはしなかった…となぜか威張ってみる。
「奇跡の人」というとアン・バンクロフトのアニー・サリバンとパティー・デュークのヘレン・ケラーによる映画が有名である。私も映画好きの母に連れられて行っていても不思議ではない時期である(残念ながら記憶はない)。私より後の世代の少女漫画好きの方には「ガラスの仮面」の劇中劇として姫川歌子のアニーと姫川亜弓/北島マヤ(ダブルキャスト)のヘレンでおなじみだろう。単行本の9巻最後から12巻に渡って描かれていて、そのうち11巻後半から12巻前半の歌子・亜弓親子によるオーソドックスな舞台の全容は「奇跡の人」の見どころを網羅した優れたガイドになっている。40数年ぶりに(今回はkindleでこの4巻を買って)再読したが少し震えながら一気読みしてしまった。
アン・バンクロフトは映画「卒業」でダスティン・ホフマンを誘惑するミセス・ロビンソン役のイメージが強烈である。そして姫川歌子も亜弓の母でベテラン女優である。どちらにしても内容を知らずに印象だけでアニーをベテランの厳しい先生だと私が誤解していたのも無理はない。実際はアニーがヘレンのところに派遣されたのは20才と11か月のときであり、盲学校を卒業してすぐの新米教師であった。なので高畑充希さんのアニーでもまだ年齢が高すぎるのだが7才のヘレンを20才前後の女優さんが演じるのだからバランス的には妥当なのだろう。
本舞台は私の期待・想像よりかなりコミカルな作りであった。演出家の狙いなのか現代的な事情によるものなのか分からないが、もっとシリアスならもっと泣けたのにとちょっと残念ではある。でも納得のスタンディング・オベーション。
高畑充希さん(アニー):前に観た舞台でもそうだが、素人目には難役も余裕でこなしているように見えてしまう。実際は一杯一杯なのかもしれないが、7月下旬からの「ミス・サイゴン」では苦しんでいるところを観たい気もする。
平祐奈さん(ヘレン):セリフは最後にWaterと言おうとしてウーと唸る一つだけである。3時間ずっと表情の変化を抑えてその時を待つのである。初舞台がセリフなしというのは素人目にも厳しさが想像される。しかしダブルコール時に観客が一斉に立ち上がって迎えてくれるのは病みつきになるだろうなあ。それから私は映画「暗黒女子」での陰のある美少女役に痺れたが、近くのサッカーファンらしきご婦人には「長友の嫁の妹」なのだった。まあ長友選手が平祐奈の姉の旦那と呼ばれる日も遠くはないだろう。
池田成志さん(ヘレンの父):シリアスとコミカルが瞬時に切り替わってどちらも自然。うますぎる。
村川絵梨さん(ヘレンの母):この役がコミカルな要素の少ない一番普通な設定であった。ひたむきな愛情を注ぐ母のぶれない演技は全体の基準線になっていた気がする。落ち着いた美しさが印象深い。
そして本舞台の一押しは盲学校の生徒たち。短い出番だが大いに癒された。