刺青/シセイ【ご来場ありがとうございました!!】 公演情報 劇団印象派「刺青/シセイ【ご来場ありがとうございました!!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    エロスと狂気と愛
    今回の公演は秀逸です。芸術的にもレベルは高い。
    曼荼羅のような香りとアジアンちっくな音楽。インドやタイを思わせるような空気感に圧倒されます。

    ものすっごくお勧め!

    続きはネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    まず、今回の戯曲を観て感じたことは米山航平は谷崎潤一郎の『刺青』の小説から舞台に不必要な文面をそぎ落とすのが巧みだと言う事だ。
    小説を舞台化するとき、その原本をどの位そぎ落として、出来上がった戯曲に今度は何度も批判を繰り返して完成させるのだと思うが、そんなとてつもない時間と労力をかけてもなお、ふつうの感動だけでは納得できない観客に対してアジアンチックなダンスと音楽、そして笑いというスパイスを振りかけて独特の世界観を作り出していたと思う。

    オープニングも素晴らしかったし、実際にお香を焚いていたのだろうか?
    いい香りがしていた。

    物語はSの失踪の謎に包まれながら、その恋人・華澄美の異常で絶対な愛の下に、次々と解明されていくが、一方で、Sの育った環境や孤児となって未亡人に引き取られた経緯、その未亡人には異常な性癖があり、Sがその対象となっていた事実を表現する。
    暗く陰険になりがちな物語だが舞台は随所に笑いのソースがふんだんに仕込まれており、とにかく楽しかったのだった。

    華澄美のSに対する愛は絶対だけれど、その愛は自己中心的で傲慢で時に冷酷ゆえにSに近づいた女を次々と殺してしまう。
    まるで全世界を敵にまわして一人で戦おうとしている戦士のように。
    やがて華澄美は自分の目にも刺青して盲目となってしまう。「この行為こそが貴方に対する絶対の愛の証」と言って。

    そうしてSは失踪した。華澄美の絶対の愛に、歪んだ愛に、見えない鎖に繋がれた自分自身に怯えたのだ。

    絶対の愛は美しい、けれどそれは破滅に向かう。

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    2009/08/14 17:57

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