時々展覧会 公演情報 時々自動「時々展覧会」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    由緒正しき日本の前衛。倒すべき敵は妖怪キャピタル(資本〈主義〉)。芥正彦の舞台を観に行った時と似た感慨に。
    『人工地獄(Artificial Hells)』とまで言われているインタラクティブアート(双方向芸術)の世界。今回はコロナ対策の為、当初の予定の「作品(俳優)展示会」を断念。通常の舞台の形を取ることに。若者が目立つ客層は現代美術(コンテンポラリー・アート)の愛好家のよう。37年の歴史を持つこの劇団の訴求力の高さ。主催の朝比奈尚行氏の挨拶から始まり、後ろのスクリーンには映像や写真や絵が流れる。所々、朝比奈氏の解説入り。全てのマイクスタンドに血が滲んだ包帯が巻かれ、無機生物のよう。

    まずスクリーンに旅一座の面々の冒険の旅が映し出される。これがPV調のかなり良い出来。体調不良で降板となったチカナガチサトさんも映像のみで出演。「東京少年」の笹野みちるを思わせる中性的な魅力。そしてその面々が会場に入ってくる。
    サーカス団のような思い思いの出で立ち。全員歌唱力は折り紙付き。なかでもホアキン・ジョーカー風味なクラウン・メイクの伊地知一子さんと柴田暦(れき)さんの歌声が印象に残った。会場に防音設備がないことを逆手に取り管楽器なし(ウクレレのみ)のアカペラ縛りでいきなり始まる合唱。しかも無茶苦茶レベルが高い。足踏みで異なるリズムが刻まれ見事なアンサンブル。この展開が苦にならないのは曲の素晴らしさ。今作の楽曲の殆どを作曲した故・今井次郎氏の才能。

    ニュートンが発見した「光にも重さがあること」、降り注ぐ光の重さで潰れていく動物達の姿が絵本のようなイラストで展開される疑似科学テイストな“みんなのうた”の『また森へ』。
    時々失神したり眠りに就いたり突然誰かがスキャットを口ずさんだり・・・。
    「『風吹き』やろうか。」と誰かが言い出し、何度も歌詞を変えて歌われる代表曲的『風が吹いてきたよ』。
    『革の鎧』の歌詞が意味深。
    「もしもわたしに勝ち目があるなら
     何も信じぬ虚ろな心
     これを頼りに撃ち進むだけ」

    会場の元映画館を拠点に今後活動していくそうだ。ハマる人はかなり深みにハマりそうな『It's sometimes automatic.』。

    ネタバレBOX

    上京してすぐ何かの切っ掛けで足を運んだ人が観たならば、「東京は怖い所だ」と思うだろう。

    遅れて合流してくる三井耶乃(かの)さん(別の人かも?)、いきなり服を脱いで下着だけに。(「何でもするので入れて下さい」の意味か?)。訳が分からないが歌声は続いていく。

    紛争地域へ観光旅行に出掛けたカップル、戦争を娯楽として目茶苦茶楽しむ。実は移動中のトラブルで自分達の祖国に戻っていることに気付かない『素敵な夜』。曲の前に作り始めたポップコーン、パンパンと弾け鳴り響く破裂音が爆撃音へと重なっていく。POPなイラスト風絵画で綴られる。

    ラストの量子力学漫才は、理系の学生が見たら大爆笑だろう。『インターステラー』を観ているような知性の地平に圧倒された。

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    2022/05/02 12:24

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