実演鑑賞
満足度★★★★
75分+20分休憩+75分。2018年の舞台(NHK-BSで観劇)は正味180分を超えていたので30分も短く、エピソードをかなりカットしていることが分かる。
素のPARCOの舞台の中央に冷蔵庫だけが置かれていて、そこにセットが移動してくる。常にガランとして広さを持て余していると思ったが家族の心の空虚さを感じるべきだったのかもしれない(ガランとしていると感じたなら演出の狙い通りなのだろう)。
外国から人を招いて斬新な試みをしてもらうことはもちろん大切だ。それは分かった上で今回の演出の好き嫌いを言えば、いろいろ動き回るのが煩わしく、やはりこの劇は素朴が一番という身も蓋もない結論になる。
父と息子の話が大きな柱ではあるのだが、特に父と長男の話であると感じた。昔は長男が家督を相続することもあって長男第一主義だった。ウィリー本人は長男ではなく、そのことで悲哀を味わったこともあっただろう(そんなことは書かれていないけれど)がそれでも長男を溺愛し期待してしまうのである。以上は私の父と重なるがための勝手な想像であるが、次男の影の薄さはしっかり意図して書かれたはずである。
お話は現在と10数年前の幸せだった時代が場面転換もなく連続するのだが、最初の回想シーン以外でははっきりとした目印がなく混乱しそうになる。2018年では母(片平なぎさ)の声質で区別していたが分かりやすい反面、若干のわざとらしさがあったかもしれない。まあしかし、この片平さんは最高だった。今回の鈴木保奈美さんの現代的な妻はちょっと好みではなかった。