実演鑑賞
満足度★★★
『弥生、三月』、波瑠と成田凌主演の映画は当時観た。高田馬場で再会した二人、逃げる波瑠を追う成田凌。大森ベルポートでやっと捕まえる。「随分、走ったな」と映画館で感心したもの。1986年の3月、高一の時に出会った二人の人生を2020年3月まで三月縛りで描いていく。数年単位で飛び飛びの三月のエピソードだけで、間に何があったかは観客の想像力に任せる試み。
菅田将暉と小松菜奈主演の『糸』と話がこんがらがる。要はお互い好き同士の二人が、あれやこれやの障害で中々結ばれないさまに一喜一憂する『君の名は』(岸恵子主演の方)系すれ違いメロドラマ。観客がやきもきしたら勝ちのジャンル。 映画はイマイチで、これをどうミュージカル化するのか見当が付かなかったが・・・。
正義感のやたら強い弥生(田村芽実〈めいみ〉さん)、Jリーガーを目指す山田太郎、通称サンタ(林翔太氏)、薬害エイズで苦しむサクラ(岡田奈々さん)の物語。
語り手として神里優希氏、見事なバレエを踊りながら舞台転換を行うkizuku氏と大倉杏菜さん(やたら巨乳)、ずっとピアノを演奏し続ける安藤菜々子さん。演出に品があって美しい。楽曲にもオリジナリティが感じられ、繰り返す詩の構造も効果的。ピアノの旋律が奏でられ続け、真白な精霊のように優雅に舞う二人の男女。バックのヴィジョンに映し出されるイラスト調の背景のセンスも冴えている。出演者の歌唱力も本格的。
胸を焦がした高校時代からそれぞれの道に別れ、家庭を持ち夢に挫折し何度も人生を諦める。その度に目に見えない不思議な絆が自分達を繋いでいることを感じていく。
『奇跡の人』のサリヴァン先生に憧れて教師を目指す弥生。演ずる田村芽実さんは元アンジュルム。時折表情が若き日の吉永小百合を思わせ、古風な顔立ちが清楚で役に合う。物語のキーを握る岡田奈々さんも素晴らしい歌声で、登場するとステージがぱーっと明るくなる。
演出の菅野こうめい氏がいい仕事をした。