偏執狂短編集V 前夜祭 公演情報 劇団パラノワール(旧Voyantroupe)「偏執狂短編集V 前夜祭」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    メチャクチャ面白いか超つまらないかのどちらかだろうと予想して賭けてみたが・・・。

    『黒の章』
    ①H+(トランスヒューマニズム) -頽廃芸術展-
    ②メンゲレとグレーゼで
    ③黒髪と魚の足とプレシオサウルス

    『白の章』
    ④ジャンヌダルク異端審問裁判
    ⑤きこりと木の精
    ⑥ニヒリズムの肖像 2022

    ①1941年、ヒトラー(井口ジョージ氏)が画家のツィーグラー(和日和生〈のどかかずき〉氏)に退廃芸術について講釈を垂れている。そこに時空を越える伝説の男サン・ジェルマン伯爵(窪田裕仁郎氏)が現れて、ヒトラーに彼の憎むスキャンダラス画家エゴン・シーレ(平良和義氏)の日々を見聞させる。
    ②アウシュヴィッツ収容所で過酷な人体実験を繰り返したメンゲレ医師(宇田川佳寿記氏)が主人公。今作では彼は周囲の誤解に巻き込まれた善人として描かれている。傍に控えるのは19歳でアウシュヴィッツの看守になった女性看守イルマ・グレーゼ(木下紅葉さん)。性的サディズムの権化でナチスの最年少刑死者。メンゲレは双子を使った人体実験をする羽目になる。
    双子の被験者役の杉山華子さんが可愛かった。
    ③知的障害者を多数雇用したような気違いサーカス団。そこに訪ねて来たのは医学研究者(上原ぺこさん)、合成麻薬MDMAを使って損傷した脳機能が回復される論文が証明されたとの報告。
    フタバ役の小野瑞季さんに何故か見覚えが。大槻ケンヂの『くるぐる使い』をいつか演るならば、是非彼女で観てみたい。
    ④ジャンヌ・ダルク(やすいまほさん)がフランスのルーアンで異端審問に遭う。
    ⑤謎のきこり(高橋弘幸氏)が31人の女性達の足首を切断して拐っていく奇怪な連続誘拐事件。落合刑事(窪田裕仁郎氏)は憧れていたミステリー事件に遭遇して大興奮。
    高橋弘幸氏の造形したキャラが良い。
    ⑥19世紀フランスで死刑となった犯罪者でありつつ、詩人として人気を博したピエール・フランソワ・ラスネール。彼をモデルにした男、演じるは平良和義氏。
    死刑執行人の一族、サンソン家に嫁いだアヴリル(杉山華子さん)は歪んだ階級社会を憎んでいて、この世を正そうと密かに心に期していた。彼女に恋するも選ばれなかったシャルル(宇田川佳寿記氏)、彼女の兄代わりのジャン(山下諒氏)。結婚式の日、事件が勃発する。平良和義氏のキャラが決まっていて、フェンシングの殺陣も見事。杉山華子さんは絵になる。

    ⑤と⑥は見所あり。『白の章』の方がお薦め。

    ネタバレBOX

    ①幼女を裸にしてモデルにするエゴン・シーレの倒錯美。ヒトラーは怒り狂うが、自分との共通点を見い出す。善悪の彼岸に立ち、世界や自分を滅ぼしてまでも追求したい“美”があった。話が長く無駄が多い。『新・デビルマン』みたい。
    ②話が長く無駄が多い。
    ③唐十郎調で空気がガラリと変わり、ちょっと面白そうに。白痴の振りをしていた元研究者(小野瑞季さん)は恋人(山本リョウ氏)の損傷した脳が治療出来なかった罪悪感から苦界に身を投じていた。後半がつかこうへい風味でだらだらだらだら長く引き伸ばした感じでぐったり。話もひどい。
    ④企画系AVのような雑な作り。イングランド人の看守達にレイプされ続けるジャンヌ。フェミが見たら発狂するような描写。どうにもつまらないのだが、火刑に処せられる最期のジャンヌの台詞が良い。「お前達男共を永遠に呪ってやる!いつかお前等が女達に支配され差別される日がきっと来る!」
    ⑤江戸川乱歩風味で『盲獣』なんかを思わせる。凄くキャラも流れも好きな感じ。
    ⑥凄く良く出来ている。全ての展開と伏線に無駄がない。貴族共が邪悪すぎる気もするが。ラスネールの処刑からのエピローグがぐだぐだし過ぎで残念。もっとズバッと決めて貰いたかった。ラスネールのここぞと歌う歌の歌詞とメロディーがイマイチ。人の胸を打つ言葉がここでこそ必要だったのだが。

    石井輝男や牧口雄二のセンスが足りない。エロと笑いとグロのバランスか。『恐怖奇形人間』の土方巽なんて、作品を超えてしまっている。

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    2022/04/19 00:20

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