夜ふかしする人々 公演情報 戯曲本舗「夜ふかしする人々」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    3つの劇団が「夜ふかしをする人々」を共通モチーフに描いた短編、それぞれに趣があって楽しめた。オムニバス公演で、「夜」以外に「人々」という、人間(親子)関係を紡いでおり、何となく似たイメージを連想する。

    タイトルは、「浮遊している、俺ら」(水中散歩)、「アンフォルム」(戯曲本舗)、「機種変更」(劇団二畳)で、ストーリーはチラシに記載あり。各作品には、それぞれ「思い出」「妄想」「夢」といった浮遊・虚空感が漂う。

    「夜」は、仕事帰りにフッと空を見上げると煌々と輝く月があり、昼とは違った心持になる。夜には夜の魅力があるのと同様、劇団それぞれの特徴が表れた共演にして競演らしい試み。今後も続けてほしい公演である。
    (上演時間100分 各30分×3 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    基本は素舞台。持ち込まれるのは椅子ぐらい。ただ「アンフォルム」は、椅子の変わりに寝袋や積み木が持ち込まれる。3団体とも登場人物は3人で、濃密な会話劇を展開していく。各劇団らしい作劇で、共通の「夜」の捉え方、描き方が異なり、そこが本公演の魅力であり見どころ であろう。当日パンフに、プロデュースした戯曲本舗のサカイリユリカさんが、「アンフォルム」について、3作品の中でも異彩を放つ、そして非日常に身をゆだねて と記している。たしかに他の2作品は、身近にありそうな物語である。

    本公演の全体を通したイメージは、何となく「雨月物語」を連想。構成(「雨月」は9篇)は勿論、合同での出版(共演)や挿絵(公演チラシは3団体の作品イメージ)という外観、そして「アンフォルム」という捉えどころのないタイトルが「夜」=「何も無い」に通じる。しかし、実は夜には夜の世界…生き方や必要性を描き出している。

    ●「浮遊している、俺ら」
    子供の頃は夜が怖かった。夜が来なければいいのにと思っていたが、ある日 友人からの「夜を味方にする」というアドバイスに救われる。そして探偵業へ。夜の公園で団地を見つめる男3人の取り留めのない会話が、日常と非日常、実像と虚像、それぞれを行ったり来たりするようなファンタジー作品。

    ●「アンフォルム」
    吹きっさらしの荒野に、夜の帳が落ちていく。3人の男女は何かを待ち続けているようだが、それぞれ自分の世界観に入り込んだままで、会話はチグハグ。そのうち、女が抱えている寝袋の中が気になりだして…。来ない友人、影=自分に畏怖する、怪奇的な劇風は「雨月物語」を連想。が、一番動きが激しく、夜を満喫しているような…。

    ●「機種変更」
    葬儀場。喪服姿で故人の娘がぼんやり。色々あった親子による寝ずの晩の会話劇。「携帯」の「機種変更」に準えた、早く見直せば良かったと。しかし線路に例え、交わらず平行する会話は それはそれで良し。内(過干渉)に行けば衝突、外(無関心)に行けば離れてしまう。作品中では一番オーソドックスな描き方。故人の俯瞰した姿が印象的。

    3作品の登場人物は3人と少人数、しかも舞台装置もないから、確かな演技力が求められる。「夜ふかし」という状況をどう表現するか、物語を「紡ぐ」というよりは、「空間劇」の面白さといった公演。
    コロナ禍で公演がなかなか出来ない状況、それでも何とか工夫したのが本公演だ。最小スペース、少ない舞台セット、少人数という制限・困難を乗り越えての上演に感謝。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/04/16 14:31

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