いかけしごむ 公演情報 劇団俳優難民組合「いかけしごむ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    別役実「いかけしごむ」は何度か観ているが、また新たな観点で観ることが出来た。公演の魅力は、舞台の雰囲気作り。なお、登場人物の女を男優が演じているが、その演出の必然性がもっと感じられれば…。
    (上演時間1時間15分)

    ネタバレBOX

    全体的に薄暗く、この先はないという路地裏の雰囲気をよく表している。天井、板(床)や壁に透明なシートが敷か(張ら)れ、その下に新聞紙が敷き詰められている。ほぼ中央に運命鑑定と書かれた占机と手相の行灯等、何故か赤電話(受話器)が吊るされている。下手側には木製ベンチと灰皿スタンド、後ろに「ココニスワラナイデクダサイ」の張札が立っている。舞台と客席の境は明確にしていないことから、演劇という虚構と客席の現実(新聞紙によって日常の出来事)が地続きになっている。その舞台構造に新鮮さを覚える。

    女(ふじお あつやサン)が現れ、構わずベンチに座る。その後 男(竹岡直紀サン)が現れ女とのチグハグな対話が始まる。女は次々と男の状況等を言い当て、男を不安と混乱に陥れる。平行線を辿る会話は珍妙でコミカル。何が本当で何が嘘かも分からないままミステリアスな対話が連なる。そのうち男が持っていた袋の中身に言及してくる。男曰く、イカで消しゴムを製造できることを発明し、そのため秘密結社・ブルガリア暗殺団に命を狙われていると。そんな事実があるのか、女がリアリズム=現実もしくはリアリズム≠現実と向き合うことになるが…。ラスト、女の独白は自分自身の身の上話。
    さて、赤電話は「命の電話」で、何事か相談した結果「死ね」という回答だったらしい。そこに姿・形のない世間が突如として表れ、無関心と無責任といった冷たい風が吹く。会話劇に状況が入り込み、物語が立体的になり広がっていく。

    女は男が持っていたビニール袋の中身をぶちまけるが、出てきたモノが不気味。そのモノや喫煙シーンなど、今そこにリアルを観せる。

    卑小だが、男優2人の役を逆にしたらどうなのか?女役の ふじお あつやサンは大柄で声は低く、一方 男役の竹岡直紀サンはふじおサンより小柄で、声は高いような。男女の性差、その特徴を一般的な固定観念で云々するつもりはないが…2人のイメージから そう思えた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/04/10 17:21

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