実演鑑賞
満足度★★★★
九州北部(佐賀の武雄)の旧家の、戦争中から戦後10年までを描く。次男継男(三國志郎)の婚約者がグラマンの機銃掃射で死んだ、そのグラマンは撃墜され、パイロットはこの家の祖母(内田尋子)の尽力で殺さずに捕虜にした。長男は嫁を残して出征中。継男は徴兵拒否して出頭するが、軍部隊副官の叔父(桑島義明)の力で精神病とされ、特高(鈴木正昭)の監視下に。
深刻な話だが、芝居は明るい。女たちのおかげである。継男の怖いもの知らずの理想主義のせいもある。ただ戦争中なのに軍人や特高の威圧感がなさすぎる。スクリーンに切り取られた映画はいいが、客席と地続きの舞台で、戦争中の空間を現出させるのは難しい(それとも、戦争を特別視しすぎだろうか)。井上ひさし「きらめく星座」や宮本研「反応工程」の達成の貴重さがわかる。
二幕の戦後になると、この明るさが生きてくる。継男はいまや英雄になっておかしくないが、相変わらず、保守的な家のなかの異分子で「ふうけもん」「冷血動物」扱いされている。この異分子と、元軍人が同じ家でぶつかって、芝居の軸をつくる。低い声で重きをなす母(二瓶美江)もよかった。継男の隠れた地主意識を、理解者である元小作の加代子が、我慢しきれずにグサッと指摘して言い争いになるのもアルアルだ。
80分、休憩10分、60分の2時間半