箱を持っている 公演情報 劇団あおきりみかん「箱を持っている」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    まるで箱が積み上がっていくように、うまく構成された不思議喜劇
    ちょっとした不思議設定をもとに、いろいろと考えてしまうような舞台だった。
    笑いの数はそれほど多くないのだが、なかなか興味深い内容と展開がとても好印象。面白かったし。

    ・・・またネタバレに長々と書いてしまいました。

    ネタバレBOX

    人は「箱」を持っている。あるときからそれが見えるようになってしまう。どうやらまったく同じ箱を持っている人を見つけて、その箱を潰してしまえば、もう箱は見えなくなるという。あるとき「嫌われ屋」という商売をしている、人に嫌われたいと思っている女と、人に好かれたいと思い「女優」をしている女が、互いに同じ箱を持っていることに気がついた。そして、彼女たちは、「取材」という名目で相手のことを知ろうとする・・というストーリー。

    誰しも、自分を「演じて」いたりする。「こうありたい」「(みんなに)こう見てほしい」などという欲求からだ。「見せたい自分」に「演じて」いるのだが、自分は「演じている」とは思っていない。というか、演じているように周囲には感じてほしくない。そのために無理をしすぎたりしている。

    自分の性格がこうだから、こうありたい(こうあるべきだ)と思い込んでいる2人の女が、互いに「同じ箱」を持っていることが見えてしまう。相手を観察するうちに、自分の中で見たくなかった「演技する自分」「本当の自分」の影がちらついてしまう。それがとても嫌でたまらない。同じ箱を持っているのが嫌だし、彼女は自分とは同じではない、と互いに強く思う。それは単なる「近親憎悪」とは少し違う感覚だ。

    「箱」が見えてしまう状況というのは、どうやら、自分自身のあり方に行き詰まりが「見えて」きてしまった兆候なのかもしれない。ある種の閉塞感からくるものか。
    「箱」を見えなくしたいのは、自分と同じ箱を見たくないからであり、他人の箱が見えてしまうことそのものが嫌というわけではないのだろう。
    だから、潰すべきなのか、どうするべきなのか悩んでしまうのだ。見えなくしてしまっていいのだろうか、ということもあるのだろう。

    「箱とは何か」「箱が見えることの意味は」という謎を最後まで引っ張りながら、結論は具体的には提示せず、観客にある程度委ねながら、さらに記憶と事実を、どちらが正しい事実なのかはわからないまま見せていく手法はうまいと思った(ビデオによるリプレイなど)。

    彼女たち2人は、どうやら記憶も自分たちが感じていることも実際とはズレているようなのだが、それを彼女たちに突きつける2人の男たちも、実は互いに同じ箱を持っていて、やはり互いに憎悪があり、親近感もある。つまり、彼らが見せている彼女たちの状況も、すでに歪んでいるのかもしれないという不思議な感覚に陥る(ビデオに写っているからといっても、見ている側の感覚がある以上、事実とは限らないのだ)。つまり、自分の見ている世界が事実とは限らない(それは観客の側にとっても)。

    舞台では物語が進行していきながら、箱がどんどん積まれていく。最後は彼女2人を取り囲むように積まれていく。彼女たち2人だけの世界に塗り込まれていくのかと思えば、箱は崩れ、彼女たちは互いに別れて行く。

    相手のことを取材して知れば知るほど、自分の中にある「見たくない自分」が見えてきてしまうのだが、それを突き詰めていけば、その「見たくない自分」も「自分である」ということに気がついたのだろうか。穏やかに話す2人の姿がある。

    互いにわかり合えたのか、つまり、自分自身の姿に納得できたのか、ラスト、そんな「世界」から、ぴょんと飛び跳ねてこちら側(観客側)にやって来る2人。2人とも手には箱は持っていない。それは箱を潰してしまったのか、あるいは、閉塞感を互いに(自ら)突破して、箱の見えてしまう状況を脱したのか、あるいは、単にわれわれ観客には箱が見えないのか、それはわからない。男にはまだ箱が見えているようなのだが。
    意味を考えさせられるような、とても印象的なラストだった。

    ただし、観ていてわき上がる疑問に対して「コレだ!」と具体的に何かを突きつけることをしないというのは、諸刃の刃であり、観客が自分でいろいろ考えることの余白を提供しているようでもあるのだが、伝えたいメッセージが伝わらない可能性もあるのではないだろうか。

    さらに書いてしまうと、主人公の2人の女については、互いの取材でどのような人なのかが、浮かび上がってくるのだが、そのアウトラインが細いというか弱いというか。そこが太く強く浮かび上がってきたのならば、メッセージもストーリーもすべて伝わりやすくなったように思えるのだ。これは前回観た「蒲団生活者」でも感じたことなのだが。

    ついでに書くと、ある集団に嫌われることを仕事とする者を送り込み、その人を全員が嫌うことで、集団の結束を強めるという「嫌われ屋」の設定はとても面白いアイデア。

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    2009/07/11 04:55

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  • みささん

    それは私じゃないっすよ(笑)。

    2009/07/15 04:14

    あきらさん、言い忘れました。この間、あきらさんのプロフィールを拝見して「「観たい」は原則、観に行く公演のみ記録しています。」って部分のみ、ぱくった!(てへへ)
    ご容赦を。

    2009/07/15 00:37

    みささん

    コメントありがとうございます。
    「苦し紛れ」とお書きになってますが、みささんの箱の意味はとてもわかりやすくて、「なるほど」と思いました。

    「この二人の箱を持ってる女は元々、一人なんじゃないか」それも言えるかもしれませんね。表裏2人というより、そのまんま同じ人のようで、丁度、取材の様子をビデオでリプレイしたときの様子などを見ると、どっちが本当の姿かわからなくなりますし。

    ・・・それにつけても、解釈が広がるのは面白いのですが、あおきり側にはそれなりの答えみたいなものがわかるようにしてほしいですね(笑)。

    2009/07/13 02:29

    >すでに歪んでいるのかもしれないという不思議な感覚に陥る(ビデオに写っているからといっても、見ている側の感覚がある以上、事実とは限らないのだ)。つまり、自分の見ている世界が事実とは限らない(それは観客の側にとっても)。

    う~~ん・・。深いですね。実はワタクシの前にUPされてましたので、熟読してから自分の「観て来た!」をUPしました。これを読んだらもう、UPする他の言葉もないように思えましたので、苦し紛れに箱の意味を重点的にUPしました!(^^;)

    >自分の中にある「見たくない自分」が見えてきてしまうのだが、それを突き詰めていけば、その「見たくない自分」も「自分である」ということに気がついたのだろうか。穏やかに話す2人の姿がある。

    この二人の箱を持ってる女は元々、一人なんじゃないか?などと劇中感じるところもあって、それだけにラストの曖昧さがもやもやしてしまいました。(^^;)

    2009/07/12 18:12

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