ブラッド・ブラザーズ 公演情報 ホリプロ「ブラッド・ブラザーズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2幕の思春期になった14歳のミッキー(柿澤勇人)とエディ(ウエンツ瑛士)がとても面白い。客席の笑いも多い。性への好奇心と、素直になれない臆病と、大人への反発、粋がっていながらポルノ映画行きを母親(堀内敬子=要の役として好演、歌も見事)に見抜かれて照れ隠しするかわいさ。等々。そこにリンダ(木南晴夏)が加わった、恋と友情の入り混じった三人関係。これは高校時代に私にも覚えがある。

    ネタバレBOX

    2幕後半は悲劇へ向かって一直線。14歳から18歳まではナレーションで済ませたうえ、18歳になってからは駆け足というほどのテンポアップで意外だった。だが、早いテンポが感動を薄めることはなく、観客をどんどん引き込んでいく。

    リンダの妊娠、結婚の後、エディ―とのクリスマスパーティーの約束が、ミッキーの解雇でダメに。ミッキーの、「とてもいやだった仕事、一日中立ちっぱなしで段ボールを組み立てる。それさえ、3か月職がないと、素晴らしい仕事に思えてくる」というセリフは光る。そこからミッキーは一気呵成に転げ落ちていく。

    妻リンダの「裏切り」と、二人の「密会」をミッキーが見るところは黙劇ですませる。リンダのエディに頼る心の芽生えをナレーターが「女のなかにはいつまでも少女がいる。少女を思うままにさせたらどうなるか、女はおそれつつも、やってみたくなる」と語るだけ。

    エディに銃を向けるミッキーに母が「撃っちゃダメ」と真実を告げる。するとミッキーは「どうして僕を手放してくれなかったんだ。エディの人生が僕の物だ他かもしれないのに」と叫びざま、エディを撃ち、自分も警察隊に撃たれて死ぬ。このラストは衝撃だった。母が二人は双子なんだという前は、「僕にはエディは撃てない」と打つ気がなかったのに、自分とエディが交換可能だったと知って、一層絶望が深まったのか、近親憎悪なのか。

    ライオネルズ夫人が「生き別れた双子が、互いに双子だと知った時、二人は死ぬ」と語った迷信が怖いように完成する。

    母が「嘘だと言って、芝居だと言って、やり直せるよもう一度と」と静かに切々と歌う。死んだ二人がここで起き上がって大団円という演出もあり得るが、シリアスな劇としてはもちろん死んだままの方がいい。歌詞は「昔の映画の場面だといって。マリリン・モンローの」とあり、「マリリン・モンロー」の名前が劇中歌で繰りかえされたのが、ここに収れんして舞台を浄化する。

    0

    2022/03/25 10:39

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大