実演鑑賞
満足度★★★★★
若手劇作家の中でイチオシの横山拓也の大劇場進出作でまずはめでたい。横山の微細な会話劇を、ウォーリー木下が大舞台のエンターテインメントに見事に仕立て直した。セットは、天井からぶら下がった無数の白いひもが林のように並び、舞台には8個程度のイスとソファー、テーブル。コート、スタンド、振り子時計等々も宙に浮いており、それがシルエットとして、家庭内の様子を象徴したり、蛍光灯や白熱灯がついて、府に気を変えたります。舞台奥にドラムと、アルプホルンの小型原型楽器を電子的にビブラートするような楽器(Didgeridooというらしい)の二人のミュージシャン。奥の壁面には桜をシンボライズした水玉でできた花模様や、様々な中小デザインが、音楽に合わせてダイナミックに展開する。
舞台のバックでこれだけ支えたうえで、6人が演じるのは、夫婦(徳永えり、前野朋哉)とアラフォーの兄弟(加藤シゲアキ、須賀健太)そして老女(多岐川裕美)と子供(河村花)の縫う人の、3組の会話。縫う人の二人は、どこかの桜並木が伐採されて、桜が見られなくなった話をしている。
最初は夫婦が、夫が路上実験中の自動運転車に追突されて、警察に言わんといてくれれば、新車と交換するといううまい話なんや、などたわいもない話から始まる。そして夫婦の妻が妊娠したかもしれないという話から急転直下、本題へ入っていく。兄弟の母ががんで余命いくばくもないから「孫を見せてやれよ」という話もかさなり、産む産まないをめぐってのシリアスないさかいになる。
子どもを産む産まないでシビアにぶつかる演劇は、数年前にどこかの小劇場でも見た。今回もいい芝居だった。男と女の負担の違い、埋めがたい溝が突き付けられて、痛い。横山劇には珍しく、あまり笑いが起きなかったのは不思議だった。休憩なし2時間
客席はずらーッと女性ばかり。本当に99%女性という感じで、しかも若い人が多い。この女性たちが、この芝居をどう思ったか、聞いてみたい。
2022/03/21 11:54