What's your destination? 公演情報 遊々団★ヴェール「What's your destination?」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    観応え十分。ハートフルコメディ風作品で、コロナ禍の今だからこそ観たい! お薦め。

    強雨にも関わらず満席。中には小学生らしき子供連れの親子もいた。描かれているのはズバリ家族愛、特に母親との絆を強調している。場内に入ると、アッと驚く舞台セット、何を表しているのか一目瞭然、そして開幕して役者が舞台通路から現れた途端に、その世界観が一瞬にして解る。
    2018年に上演した作品で、いつか再演したいと思っていたらしい。なるほど、多くの人に観てもらいたい作品というのも肯ける。
    (上演時間2時間強 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、真ん中を少し開け、階段状に上方に向かって2列づつ並んでおり、客席側に大きなハンドルがある。そぅバス車内の光景である。全体は白い敷物で覆われている。役者は客席通路を使って登場するが、7人が喪服で他の7人が私服。一瞬にしてこの世ではないことが解るが、まだ三途の川を渡っていないことから、あの世とこの世の間(ハザマ)らしい。白い敷物と黒い喪服が、何となく鯨幕のように見える。因みに六道バスという名。客席は3方向(コの字型)、正面とバスの両側面からの観劇。

    チラシに書かれている人々は、何らかの理由で亡くなったが、その記憶がない。このバスは六道(地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人間・天道)で、生前の業(ごう)に従って死後に赴くべき六つの世界。喪服の名前は小獄、鬼瓦、畜場・我修院・間・天音で、夫々が亡くなった人を自分たちの世界へ導くために派遣されている。亡くなった者は、どこへ行くのか選択を迫られる。そこで生前の己の行いを一人ひとり回想(御霊観)していく。自分の人生(行い)を俯瞰することで、生前気付かなかった事が見えてくる。

    共通して、自分のことを いつも思っている人ーー母との関係が浮かび上がる。あまりに身近で当たり前な存在。しかし切っても切れない母子の絆が切なく悲しい。一人ひとりの人生を通して、今(コロナ禍)を考える公演。離れ離れで暮らしている肉親、移動もままならない環境下で、せめて思いを馳せることが出来ればという気になる。コロナ禍以前に上演された公演だが、地続きで 今こそ大切な人を思う、というピッタリの作品。

    演技ーーキャラクターを鮮明にし、人物描写を少し誇張する。何となく類型化した人物像を立ち上げることによって、観客の共感を誘う観せ方。先の死んだ者、六道からの使い以外に、六道への案内役・六花(矢治美由紀サン)の明るい天然ボケ風の演技、運転手役・地蔵(中村雄三サン)は台詞が少ないが、温かく滋味溢れる表情が良い。このバスツアーの行先(六道)への落ち着かせ方は巧みで、逆に六道に合わせた人生行路を描いているとも言える。ラストシーン…死への旅路であるが、同時に生への力強さを感じさせる清々しさ。7人乗っていたのだから、おのずと結末は知れよう。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/03/19 08:39

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