実演鑑賞
満足度★★★★
3幕3時間(10分と15分の休憩あり)という長い芝居。とにかく人物設定が(三島由紀夫のいつものことながら)凝っている。高校生時代に行きずりの男に強姦され、その男と結婚して(復讐のために)夫婦生活を拒否している童話作家・阿里子(霧矢大夢)。知恵遅れの30歳の美青年・帝一(多和田任益)は、自分は阿里子の童話のなかのユーカリ少年なのだと信じている。阿里子の夫(須賀貴匤)、その弟(鈴木裕樹)もイケメンで、美男美女がねじが一本も二本も外れたような話を演じる。
三島由紀夫の芝居は実に人工美の世界であって、人間と社会の真実を描こうなどという志向とは真反対であることがよくわかる。セリフもしたがって、普段は言わないような修飾・レトリックにあふれている。
この中で、現実的存在ともいえる額間(大石継太)は、よれよれの背広が本当にみじめったらしくていい。阿里子の娘(一度の強姦で妊娠した)(田村芽美)が、意外とかわいらしく、したたかで、自己主張もあり、この異常な家から出ていく生命力のあるキャラクターでよかった。