実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/03/06 (日) 19:00
座席1階
80代の親に50代の子どもがパラサイトする8050問題を題材に、松尾スズキが手作り感満載のコメディー舞台に仕上げた。今回はクドカンと安藤玉恵、三宅弘城とともさかりえのコンビで味わいの違うステージに挑んだ。
クドカン×安藤玉恵の舞台を拝見。クドカンはアル中の50代息子と大学教授、安藤玉恵は80代の認知症気味のおばあちゃんと女子大生を変わり身で演じるのだが、やはり何といってもおばあちゃんと女子大生という落差のある役を演じたあんたまである。声色から雰囲気までキレのある演技で、途中にダンスシーンもある。最近のテレビドラマではメイクでごまかして、若いころも年老いた時もしゃべり方や雰囲気が同じという情けない俳優さんも散見されるが、ここはあんたまの実力というか、レベルが違うというか、プロ意識を感じた。
笑いのポイントは随所にあるが、あんたまの役どころが8050問題でドキュメンタリー映画を撮影しようとする女子大生。現実の8050問題はかなり深刻なのだが、その典型的な親子を「福祉関係者から紹介されて」撮影に入る、という設定だ。ドキュメンタリー取材ではよくある入り口なのだが、冒頭の二人の様子から、これがかなり怪しい。実はこの親子には撮影される理由というのがあって、こうした物語が松尾スズキの台本のおもしろいところだ。
初演と同様に、吹越満が効果音担当で活躍する。効果音といっても全部口でしゃべるというなかなか高度な技が必要と思える役割だ。役者の方は、エア、つまりパントマイムで対応する。こちらもなかなか困難なようで、客席はこれに見入るだけでもおもしろい。
ある意味、夫婦漫才のような流れで舞台が進行するが、そのオチはかなり笑える。ともさかの方の舞台は見ていないが、この舞台、あんたまにははまり役かもしれない。逆に言うと、安藤玉恵ならではの舞台なんだと思う。もう一つ思ったのは、クドカンって俳優なんだな、という妙な納得感だ。
見どころ満載の舞台。人気の大人計画だけに、スズナリは超満員であった。