「ペーター・ストックマン」~「人民の敵」より 公演情報 名取事務所「「ペーター・ストックマン」~「人民の敵」より」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    おもしろかった。室内をイメージした舞台の前方中央に、小学生用くらいの深さの温水プールらしきものがある。温泉をめぐる話だからかと思っていたが、そうではない。トマス(西尾友樹)の民衆への演説会、変じて糾弾会の場面で、いつの間にかくるぶし高の水がはられ、このなかでトマスが小突き回される。彼はずぶぬれになりながら訴え続ける。この迫力はすごかった。このシーンだけでも見る価値あり。

    愚かな民衆すべてを敵に回して、自分だけが正しいというトマスは、正義とも独善ともとれる。今でいえばワクチン問題、内部ひばく問題、危険を針小棒大に言う人もいることを考えると、トマスが正しいとは言い切れない。水質汚染問題がどこかに行ってしまいうのは、トマス自身が演説の冒頭で「汚染問題の話をするのではない。もっと大きな話をする」と宣言した通り。イプセンは確信犯なのである。トマスが正しいのか、それとも世間知らずのニセ預言者なのか。民主主義が続く限り、永遠の問題作だ。

    町長(森尾舞)初め、住民がトマスの温泉改修案を拒否するのは、数億という費用捻出のための増税と、2年間の営業停止の損失、さらに将来を決定的にダメにする風評被害のせいだ。これは原発から温室効果ガスまで、今も続く安全か経済かの二者択一の問題である。

    ネタバレBOX

    ペーター町長を主人公に、しかも女性でという上演台本・演出だったが、私にはどうしてもトマスが主人公に見えた。冒頭のペーターの町民への演説、孤立したトマス宅を訪問した時のペーターの「父は私が政治をすることなど一度だって考えなかった」というジェンダー差別(バイアス)、町長も(弟の騒ぎのせいで)次期選挙で有力者たちからの支援を失うラスト。いじょうが、おおきなへんこう箇所だった。全体、テキストはカット・凝縮して上演時間を短くしていた。

    0

    2022/02/27 10:25

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大