空耳タワー 公演情報 クロムモリブデン「空耳タワー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    潔くシンプルで深い
    会話に独特な質感や
    それぞれのキャラクターの鮮やかな個性に目を奪われているうちに
    物語がどかどかと積みあがっていく感じ。

    決して複雑ではないのだけれど、
    言葉にできないような
    深く不思議な感覚が残りました

    ネタバレBOX

    キャラクターはそれぞれに、
    何かを具象化したような強いイメージを発しているのですが、
    一方でバックグラウンドが
    心地よいほど潔くそぎ落とされていて・・・。

    それらが面と向かって深く絡まりあうことがなく、
    色をそのまま保ちながら物語を進めていくのです。
    饒舌に語られる言葉に対して、
    短いイメージのような言葉がまるでダンスのように返されて
    (短い言葉がリズムを刻むように繰り返される)、
    個々のキャラクターの色が一層強調されていく。。

    ストーカーの息子の犯罪を、
    「物を買って出したお金よりも多いおつりがくるような方法」で
    かばう母親、
    その冤罪にさらされた男や無実を証明する劇団の振りこめ詐偽、
    さらには誘拐・・・。刑事にも独特の趣があって・・・。

    嘘と本当を見分けることができるようになるという
    丸くて四角くて三角のオブジェが配布されていくその中で、
    不揃いのドミノがそれぞれの形状を保ったまま倒れていくような感覚で
    つながっていく物語。
    思いっきり惹き込まれているうちに、
    虚実の色分けが独り歩きをしていく中で現出した終盤の世界に
    取り込まれてしまうのです。

    それにしても、役者達の演技の緻密なこと・・・。
    たとえば奥田ワレタの母親役からやってくるある種の「ピュア」さなどにはものすごい実存感があるし、
    ケイっぽく劇団の主宰を演じる板倉チヒロから伝わってくる「したたかさ」の質感にはぞくっとくるようなきめ細かさがあって・・・。
    他のキャラクターにしても役者がしっかりと背負いきっているので、強くデフォルメされた表現が連続しても舞台の流れが揺らがない。

    だからこそ、最後のシーンたちからあざとさを感じることなく、
    絡まった紐がすっとほどけるような心地よさがやってきたのだと思います。

    この作品、人によって好みは分かれるかもしれませんが、
    少なくとも私にとってはツボを連打されたような部分があって
    むさぼるように観てしまいました。
    笑いのセンスも個人的には大好き・・・。
    あと、衣装に舞台の色を維持する洗練があって旨いと思う。

    用事ができてしまい終演後あわただしく劇場を出たのですが、もう少し劇場で余韻に浸っていたかったと思わせるような魅力がこの舞台にはありました。

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    2009/06/18 06:26

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