救世の曲 公演情報 絶対♡福井夏「救世の曲」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    演劇は稽古から本番まで、すべて人との関りで成り立っている。しかしコロナ禍では容易な事ではなかっただろう。福井夏さんがパンフに書いた「面白い演劇がつくれると思う」という心意気は、コロナ禍にあっても演劇人としての逞しさを見せてくれた。2人芝居…福井夏さん、北原州真さん。

    物語…初めは、飲み物の嗜好のような他愛もない諍い、それが段々と居心地や存在感といった重い話題へ漂流する男女の会話劇。良いとか悪いとかではなく、お互いが相手を説得にかかる、自己主張を満たそうとする展開は、流れ着いた先が何とも狂気じみている。
    日常であれば沈黙してしまうような気まずさ、しかし舞台という逃げ場のない空間で会話をし続ける。迫力ある圧倒的な演技(会話)力、その舞台に釘付けになる。

    かみ合わない会話は、「例えば」「仮に」など、なり切り人物から、相手の立場を理解しようとする。同時に多重人格が表れている様を観せる巧さ。また第三者的に観察する自分ー俯瞰によって冷静でいることを主張する。冒頭、取るに足らない拘り、些細な気持の揺れが彼女にとってはどうしても譲れない大事なこと。時に楽しくなくても楽しいふりをする、不本意に迎合する嫌らしさ。
    相手の気持を理解することが難しいと感じた時、彼は突拍子もないことを説明する。そして以外な展開へ。
    (上演時間1時間)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、大きなダンボール箱、横向き合うように箱馬。基本的にダンボール箱側にいるのが福井夏さん。その場を離れることなくダンボール箱の上に座っている。

    2人は相手の言葉を咀嚼して理解に努めているようで、実は自分が抱えている心細く不安な感情を覆い隠している。そして2人が歩み寄れない(出来)事=「魔が差す」として納得させようとしている。自分自身の感情と向き合うことの怖れ、一方で殻を破りながら前進しようとする足掻きが観える。

    タイトルやラストに明かされる事実から、実際起きた殺人事件の概観を示す。登場しない福井夏さんの恋人であり北原州真さんの従兄弟であるマサヒロの人格が浮き彫りになってくる。マサヒロはバンド活動をしているが、自己主張が出来ない、誰かに依存するような性格は、2人にとって都合の良い人。しかし段々と疎ましくなり、2人にとって苛立ちと鬱屈の日々になる。挙げ句の果て、人生を変える出来事ーー事件を起こす。行き場のない(暴力的)衝動をジワリ、じっくりと描い(演じ)た内容は、狂気を孕んだドラマへ変貌していく。

    照明や音響・音楽といった技術を駆使せず、2人の演技力だけで牽引する、シンプル→ベストな公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/02/20 20:09

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