実演鑑賞
満足度★★★★
演劇は稽古から本番まで、すべて人との関りで成り立っている。しかしコロナ禍では容易な事ではなかっただろう。福井夏さんがパンフに書いた「面白い演劇がつくれると思う」という心意気は、コロナ禍にあっても演劇人としての逞しさを見せてくれた。2人芝居…福井夏さん、北原州真さん。
物語…初めは、飲み物の嗜好のような他愛もない諍い、それが段々と居心地や存在感といった重い話題へ漂流する男女の会話劇。良いとか悪いとかではなく、お互いが相手を説得にかかる、自己主張を満たそうとする展開は、流れ着いた先が何とも狂気じみている。
日常であれば沈黙してしまうような気まずさ、しかし舞台という逃げ場のない空間で会話をし続ける。迫力ある圧倒的な演技(会話)力、その舞台に釘付けになる。
かみ合わない会話は、「例えば」「仮に」など、なり切り人物から、相手の立場を理解しようとする。同時に多重人格が表れている様を観せる巧さ。また第三者的に観察する自分ー俯瞰によって冷静でいることを主張する。冒頭、取るに足らない拘り、些細な気持の揺れが彼女にとってはどうしても譲れない大事なこと。時に楽しくなくても楽しいふりをする、不本意に迎合する嫌らしさ。
相手の気持を理解することが難しいと感じた時、彼は突拍子もないことを説明する。そして以外な展開へ。
(上演時間1時間)