モンローによろしく【2月4日~13日公演中止】 公演情報 Makino Play「モンローによろしく【2月4日~13日公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 映像鑑賞

    満足度★★★★★

    洒落たセリフのやりとりとドキドキするシーンの連続できわめて上質な芝居だった。赤狩りのなかで、裏切り、絶望、保身、転落。ハリウッドの映画関係者6人のそれぞれ変わっていく姿、変わらない姿、怒り、悲しみ、赦しの交錯が見事だった。

    幕開きは、反戦純愛映画「あかつきの二人」の製作という目標に向けて、主演の二枚目スター、キース(財木琢磨=好演)と監督ビリー(石川湖太朗)が衝突する。目標に対して、主導権の奪い合いで互いが障害になるバディものの常道シチュエーション。そこに女優志望の夢見る皿洗いシェリー(那須凛)が「ギャングに追われてるの」と、飛び込んでくる。そのロマンチックでおしゃべりで空想豊かな姿は「赤毛のアン」のよう。「往きて帰りし物語」の第三の仲間の登場であり、よくできたボーイ・ミーツ・ガール物語の始まりである。探し求めていた「タフでワイルドでいかす」女優を見つけたという設定に、アラレちゃんメガネの那須のまぶしい演技が、すごい説得力を与えている。これが1941年、日米開戦前夜の出来事。

    二幕は1951年の、シェリーのバースデー・パーティー。ハリウッドは赤狩りのさなかにある。ここでも会話のウイット、キレ、スマートは絶品。5歳の子ボビーがいるかのような、それぞれのエアー演技もいい。「わたしたち、友達だろ」という言葉が、裏切り、失望、悔恨のドラマの中で、別々の人間の口から4回も5回も繰り返される。そのたびに異なるニュアンスの、異なる人間関係がある。この作劇もうまい。

    冒頭の映画「あかつきの二人」の戦前の制作中止と、71年に完成・公開、アカデミー賞受賞という前説は、もしかしたら実話に基づく話?と思わせる。ただし日本未公開、というあたりがフェイクっぽい。実際は大物プロデューサー、ザナック(三上市朗)以外、話は全く架空。でも、ゴシップ記者のエリス(鹿野真央=好演)といい、若いモンローの影で人気を失っていくシェリーにしろ、登場人物は当時のハリウッドにいたであろう人物の一人に間違いない。

    2日目の7日金曜夜に観劇予定だったが、行ったら中止だった。うっかり、というか直前の中止決定を知らなかったので。翌週水曜昼も行ったら中止。結局、全公演中止になった。それでも初日1日公演していたので、こうして映像で見られて幸せだった。これが、初演以来29年ぶりの再演というのは勿体ない。

    ネタバレBOX

    なかでも非米活動委員会で「俺はお前の名前を密告したんだ」というビリーは、エリア・カザンを思わせる。パーティーの余興のための盗聴器(実際は電話の音のモニター化)も、決定的場面を作る小道具になり、うまい。

    友人たちが帰っていったあと、一人残ったシェリーに父からの電話。それも終わると、周囲の暗闇に、関係者が現れて、その後を語る。そこに人生の悲しみ、運命の皮肉が漂う。そして「それでも人は生きて聞いく」しぶとさを感じさせる。最後の女性はチョイ役なので、その後などあるのかと思うと、これはシェリーの大ファンで、往年のスターと握手して「この手を一週間は洗わないわ」と。シェリーが、キースと握手していった台詞を繰り返す。ただし、「じゃあ、どうやってお皿を洗うの?」と聞き返されての答えは違う。シェリーは「私は名人だから片手でできるわ」で、最後の女性は「自動食洗機があるもの」。うまい!座布団2枚!

    さらに冒頭のキースとビリーの口論に戻る。ただシェリーが安楽椅子に座ったままなのは、追憶の幻のようなエンディングだった。「ギャングに追われてるの」と割って入るのも、最後まで洒落た芝居だった。

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    2022/02/12 10:56

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