期待度♪♪♪
期待と恐れ半々
海賊ハイジャックの作品は「俯瞰する庭園」、「鬨、唾棄すべき」と観劇させていただきました。今回の「Tepes」については正直なところそれが金銭に換えて観るべき作品に仕上がっているのかどうか、疑わしく感じている部分が半分。決して劇団員の方々の努力を侮蔑する意味ではなく、演技の良し悪しに人並み以上に肥えた眼を持っているわけでもない自分には純粋にそれがどう心に響き得るものかという点についてのみそう感じているわけであります。
海賊ハイジャックの作品が優れているものであることは疑うべくもありません(と自分は感じています)。妖艶とでも言いますか、なにやら観ていると妖しく惹きつけられる独特の人間模様は海賊ハイジャックの味だと思います。間や音楽などで形作られる痛いほどに濃厚な劇場の空気には感動も覚えます。しかし、思うに、作品を通して語られるその哲学が、煮詰めすぎてその味を落としているように感じられてなりません。一番の核があまりにも心に響かない。麗美な包装に期待して開いてみれば理解し得ないタダナラヌナニモノカが顔を出したような。
ミクロな視点で観れば好きです、音楽も、演技も、セリフも。マクロな視点で観ても好きです、その作品世界、雰囲気、着眼点。でも、素直に、まっさらにそれを観てみると、伝わるものがありません、共感がありません。恐らくは自分でそうなら七割の人間がそうであるに違いなく、七割の人間に同じく響くものが無ければ、高い観劇料だと思います。どうしても奇を衒うに過ぎると感じるのです。どんな優れた哲学も大衆性の無い作品に埋没すればただ苦くそして効かない薬です。
ここまでグダグダ言っておいてなんですが作品の何をもって良しとするかは人によって違うので、こうした点についてそれを作品の短所と考えない人も大勢いるとは思うのですが、自分は今回の作品について、また今後の作品についてもその演出の手腕を活かして大衆性と哲学との両立された優れた脚本が舞台で形になってくれればと感じています。