FRIEND 公演情報 CHAiroiPLIN「FRIEND」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    安部公房「友達」が原作。照明、音響や小道具といった舞台技術を駆使し、台詞の代わりにダンス表現によって情景を観(魅)せていく面白さ。普通に物語として観たら、人(精神)や社会(構造)の断面を直截的に観るといった印象を持ったと思う。確かにテーマもそこにあると思うが、ダンスという身体表現は精神的な面と同時に肉体的な面を強く感じさせる。その表現によって得体の知れない恐ろしさ滑稽さといった抽象面が上手く表出できている。そこに この公演の最大の魅力があると思う。
    (上演時間1時間10分) 【Aチーム】

    ネタバレBOX

    招待公演。
    舞台美術、上手側は机、パソコンやライトといった別空間が剝き出しになっている。ラスト、家族たちはその空間に闖入することから、一人住まいの女性の部屋か。下手側は明かりが灯ったBOXが重なり、高層住宅を思わせる。後景は左右非対称に高層住宅を連想させる街模型が並ぶ。中央はスクリーンのような幕で仕切られ、後々 人影や心象もしくは抽象図が映される。上演前は逆さになった男が映し出されているが、板の上に同じように俯せに倒れている。照明で板の上が映される場合は、天井からの光景で観点を変えた観方を意識させる。冒頭の光景は、最後の光景に繋がり、どうしてそうなったのかといった過程を順々に展開していく。

    男と婚約者は不動産屋で新居探し、まず男が一人暮らしを始める。そこに突如 奇妙な9人家族が笑顔で歌いながら、愛と友情を唱えながら一人ぼっちの孤独な人間を探し、拒む相手の意向を無視して部屋に闖入する。物語で男は不法侵入だと表現するが、管理人や警官には信じてもらえず、男はそのまま一家と同居を続けることになる。いつの間にか一緒に食事をし新聞を読む日常ーー家族がいることが当たり前のようになる。ある日、長女と次女はそれぞれの思惑(異なるダンス表現)で誘惑しているよう。そして家族の怒りにふれ罰として部屋内の檻の中へ。次女は憔悴している男に牛乳をすすめ、男がそれを飲むと倒れた。これらの展開は、台詞がなくダンスと小道具、そして照明等の演出で表現している。台詞があるのは、ラスト 次女が男の死の間際に「逆らえさえしなければ、私たちなんか、ただの世間にすぎなかったのに……」と呟くだけ。そして男にそっと布をかける。天井から見た光景は、飛び降り自殺したように見える。

    男が、いつの間にか育みだした忠実さ盲信的な連帯意識、それが蜘蛛の糸が絡むように男を窒息させてしまう。家族という「友達」たちは、犠牲者の立場を装い、男は一見加害者(住人)の立場に立ちながら、結果はまったく逆になってしまう。この皮肉と苛立たしさによって、現代の道化者を作り出している。「友達」とは、共同体としての原理や意識が無くなってきている今、その存在や意識を問う。人は被害者であると同時に加害者にもなり得る。男も被害者でもあるが、見知らぬ家族にとっては加害者でもあり得る。連帯とか隣人愛を言いながら実は相手のことをよく知らない。だから時と場合によって、無責任に興味を剝き出し、平気で知らん顔をする。

    長女は「肉体的な愛」、次女は「精神的な愛」を「主人公に求め、また与えたいと望む」を表現しているらしい。ダンスの振付がそう思わせるのである。男の部屋を侵略する一家の偽善が、怪物化してゆくブラックユーモア。無言のパフォーマンスを通して現代社会の人間の生ー暮らしーの構造や他者との関係性が見事に立ち上がってくる。実は怖い話だと思いつつも、全体的に賑やかで滑稽に見えてしまう自分は、この公演に毒されたかも…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/01/21 15:37

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