ころぬのことは 公演情報 東京ノ温度「ころぬのことは」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    19日午後、東京・中野のNakano fで上演された東京ノ温度第十六回公演『ころぬのことは』を観た。これは、知人の役者・水野以津美が出演していた関係からである。なんだかんだ言いつつ、この東京ノ温度の公演は結構観ている方だと思うのだが、最初に今回の公演の感想を一言で言ってしまうと「これまで上演した作品の中で一番深みがあって役者の演技も充実していた」と思われた。

    舞台はとあるフェリー。冬になり、太平洋に浮かぶ離島への一人旅を計画して乗船したフリーターの細川千華(中尾茅珠)ではあったが、船内には雑誌記者やら小選挙区で落選したものの比例区で当選した国会議員・吉田五郎丸(本田一生)とその秘書、仕事に自信をなくして退職した元教師など、おかしな人ばかりが乗船していた。しかも、乗船したフェリーはその日に限って死者の霊に会えると言い伝えのある海域というか岩場を巡るという。そして、その岩場で元教師は亡くなった教え子に、議員も昨年急死した夫人に会うことが出来た。それぞれが死者の霊から激励というか伝えたかったことを聞かされて、話した霊も聞かされた側も気持ちのわだかまりを吐き出し納得したところでフェリーは元も航路に戻る。
    何をして良いか分からず一人旅をしようとしていた千華は、この船で起こったことを基に小説を書くというなすべき目的が見つかったのだった。

    話全体は千華の体験という形となってはいるが、話の中心はだらしのない議員・吉田五郎丸。もとはと言えば彼の死んだ妻が夫のことが心配でフェリーで自分に会いに来るように仕向けたという物。その妻・吉田弥生を演じたのが水野以津美で、彼女が五郎丸に切々と説教する議員たる者のなすべき事というのがなかなか奥深い内容で、聴いていて納得してしまった。
    他の登場人物も、個性的でかつ演技力のある役者が揃っていて、これから何が始まるのか、どう話が展開するのかと言う期待に十分に答えてくれた。

    上演時間1時間30分が短く感じられた。この作品、舞台セットを使った本格的な形での上演を観たくなった。と言うのも、東京ノ温度の舞台は、朗読ライブと本格的な舞台上演の中間的な上演形態だからである。まぁ、今回は役者がマスクを外して演技していたのが前回とは違っていた点。やはり表情が分かると言うことはなかなか重要な事なのだ。

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    2021/12/26 21:14

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