雪やこんこん 公演情報 こまつ座「雪やこんこん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    小難しいことを考えず、舞台上の苦労、悲しみ、かけひき、喜びを素直に味わえる作品である。初の女座長役の熊谷真実に明るい華と芯の強さがあって、適役だった。前半の、自分の別れた子の話をする「北極と南極をつないだような長ーい話」は、客席の目と耳を釘付けだった。
    女将の真飛聖は、初めて見たが、後半のストリップを押し付けるくだりの愛嬌ある迫力は見事だった。新派くずれの二枚目・藤井隆と、元国鉄労働者の女形・小椋毅の悪口合戦、なじりあいも、役柄ぴったりの演技と息のあった掛け合いで、大いに笑えた。

    作者自らが「昭和庶民伝三部作」としているが、戦争をテーマにしたほかの二作とこれは明らかに異質である。ぼくは、無理に三部作にしなくていいのではないかと前から思っている。2時間35分

    ネタバレBOX

    鵜山仁が、井上ひさしは「元役者の元を取る、それだけの話しです」と言っていたと、パンフで語っている。たしかにそのとおりである。どんでん返しに次ぐ、どんでん返しが終わってみれば、最初の母子の再会も、座員の喧嘩やドロン騒ぎも、全ては女将を再び舞台に引き戻すための「お芝居」だったということになる。たったそれだけのために、これだけ、大掛かりな話をこしらえ、座員一同が演じ抜いた。この贅沢な無駄こそ、演劇そのものと言える。

    女中のお千代が、セリフがなくてもずっと舞台にいる。お千代が見聞きしたことは女将に筒抜け、という設定なので、みな、お千代に見せるために、仲違いや、梅子座長への不満などを言っていたわけだ。お千代が観客なのである。
    大衆演劇の名台詞が、普通の会話にもふんだんに散りばめられている。七五調の歯切れのよさと、比喩やイメージを伴った言葉の枝葉の豊かさ。これ、この芝居全体が、中村梅子一座の「お芝居」だったとわかれば、全てが芝居がかっていたのも無理はなかったわけである。

    俳優(女優)を目覚めさせるためのお芝居という点では「キネマの天地」と似ている。芝居讃歌という点では、「元の黙阿弥」も似ているところがある。

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    2021/12/20 00:32

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