実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/12/16 (木) 13:30
座席1階
ブレヒトの有名作を翻案して、舞台を終戦直後の日本に設定。焼け跡に闇市がたち、人々が食うや食わず、生きるのに精いっぱいという世情での物語に仕上げた。「芝居だからハッピーエンド」という宣言があって、いつものPカンパニーとはかなり趣が違うが、街にクリスマスソングが流れる中での上演ということもあって何となく勇気づけられるような気持ちになって劇場を出ることができる。
ミュージカルなので当然、役者たちの歌唱力も問われる。でも、これはさすが。よく鍛えられている俳優陣だけあって、安心してみていられる。役者の年齢を問わず、ダンスの切れもいい。演出もシンプルで、分かりやすい。ブレヒト劇によくある難解なところは今回、まったくないので、役者たちが見せてくれる多彩な表情までしっかり楽しむことができた。
終戦の混乱期だが、そういう時代だからこそ才覚を発覚してうまく稼ぐ人たちはいるものだ。でも大多数の人は赤貧の海の中で苦しむ。「世の中金だ。金があれば何でもできる」という劇中のせりふは、豊かになったように見える現代でも、格差社会の構造は変わらない。同じ意味を持って通じる言葉だ。ブレヒトが「人生は厳しい」と言っているように、この終戦直後に本番の三文オペラでも人生の厳しさがガンガンと伝わってくる。
ただ、そうはいいながらもどこかいい加減で、どこかテキトーなところもしっかり盛り込まれて、ああやっぱり人間が生きていくにはこうでなくっちゃね、という思いにもさせられる。
ラストシーンは結構面白い。予想外の展開もあって楽しめます。