『きみがゆえにわたし』 『咲く、白。』 公演情報 踊る『熊谷拓明』カンパニー「『きみがゆえにわたし』 『咲く、白。』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    2作品交互上演のうち『咲く、白。』を観劇。
    物語とコンテンポラリーダンスの融合作品。
    物語は自分の存在確認と心地良い居場所を求めて集まった男女7人が紡ぐ話。それをダンスを交えて観せるのだが、自分にはダンス・パフォーマンスの意味するところは読み取れない。ただ極めて身体表現(体力面も含め)の質が高いことは窺い知ることができる。
    (上演時間1時間25分)

    ネタバレBOX

    招待公演。
    舞台美術は、白銀網のような幕が舞台の前後に吊るされ、場面に応じて上下に動く。板には緑の絨毯が何枚も敷き詰められ、その中央に3人掛けソファ(上演前は引っ繰り返っている)、上手に応接椅子2脚、下手にテーブル、後方に洗濯機、ごみ箱、スタンド等、雑然と色々な物が置かれている。さらに洗濯物が吊るされている。この場所はどこで、集まっている人々の関係性は、といった疑問が生じるが、物語の展開とともに明らかになる。この雑多な物は各人が持ち込んだもので、何故その物なのかは不明。

    梗概…2014年3月末日。車両が頭上を行き交う高架下で、1人のホームレスが酒に酔ったサラリーマン3人に暴行を受け、殺害された。数日後、消しきれぬ彼の血痕の上に何枚もの緑の絨毯を敷き、思い思いの家具を持ち寄り暮す人々が現れた。人々は入れ代わり2021年12月。緑の絨毯の上で暮す男女7人は互いの価値観に足を踏み入れる事を嫌い、穏やかに過ごす時間を求め肩を寄せ合った。
    ある日、7人の前に冷蔵庫を引きずる一人の男が現れる。妻との時間に息苦しさを感じここへ来た男と7人の暮らしは、やがて男が知らされる妻の"ある真実"により新しい未来へ加速する。男は、自分を否定すると、妻をも否定しているような錯覚に陥る。それだけ妻を愛していたのだが…。

    ホームレスとは、単に帰る家が無いだけではなく、心に帰る家が無い人をいう。その意味では、高架下にいる7人は心の拠り所、安心できる場所がここしかない真のホームレスといえる。また、血痕が隠れるように敷いた緑の絨毯は平和の象徴のように言っているが、こちらも隠すだけという表面的な取り繕い。7人は互いに干渉し合わないから、その場限りの”関係”でしかない。自分のことは話し(知られ)たくないが、相手のことは詮索しがち。人間はなんてエゴな生きものだろうか。”白”という色は、純粋無垢といった好イメージを持つが、逆に何にも強調・主張しない無責任な色でもあるという。それが不干渉とでも言うのだろう。観せ方は極めて心象的で抽象度の高いもの。それだけに観客を選ぶかもしれない。ラスト、薄暗い中、ランタンの明かりに照らされて朗読される詩が心に響く。

    音響は優しくピアノが奏でられ、時々 波の音、そして水が流れるといった静寂な空間イメージ。かと思えば高架下ということもあり耳障りな騒音、空想と現実の世界観を音響効果で表しているようだ。
    物語の展開とダンスの関係性(表現したかったこと)は理解できないが、公演全体としては楽しめた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/11 20:50

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