帝国月光写真館 公演情報 流山児★事務所「帝国月光写真館」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    少年探偵団の小林少年を思わせる主人公、山丸莉菜さんは躍動的でその姿をずっと観ていられる。
    支那事変から太平洋戦争へと戦火が拡大していく昭和初期。婦女子を拐う「怪人紅マント」の噂で町中に不安が広がっていた。公園にやって来る紙芝居屋が繰り広げるのはエログロ風味の「紅マント」のお話で、集まった子供達は水飴をしゃぶりながらその顛末に恐れ慄く。
    プロローグとエピローグで語られる女学生による三原山火口投身自殺事件。彼女が死の間際、最期に見たいものは「支那上海の阿片窟」で、「はないちもんめ」と「かごめかごめ」が効果的に歌われる。彼女は誰にも必要とされていない自分を殺し、誰かに必要とされる自分に生まれ変わることを望んだ。
    皆、誰かの妄想の中に棲み着いていて、更にそこでいつも何かを妄想し続けているような世界。その漆黒の闇の中に差す一筋の月光、山丸莉菜さん扮する少年の真っ直ぐな情熱は迷いがなく清い。

    ネタバレBOX

    「どちらの夢が値が高い?どちらの夢が値が高い?」
    冒頭自殺する少女は「生まれつき醜く太っていた為、皆に嫌われて育ったが、死を決意したその日から不思議とどんどん痩せていった」と語る。ワンシーンだけの登場ながら、演じた竹本優希さんが作品全体を覆う旋律として矢鱈と印象に残る。(巫女役としても出演)。

    今作のモデルとなった事件が報道されてから、その年だけで129人(未遂者も含めて944人との説もあるが···)が三原山火口に投身自殺している。「怪奇赤マント」の噂も東名阪の子供達を中心に異常に広まっていった。集合無意識かシンクロニシティか、時代は群衆を一個の不安神経症患者へと統合していく。

    高取英の作風は多分意図的に書き割りのコスプレのようなキャラクターが配されているのだろう。憲兵隊、呪術教団真理支教、謎の研究所、二重スパイ、帝国月光写真館、幻視複製機···。個々の実存感はなく纏ったイメージだけがひらひらする亡霊のよう。唐十郎のような郷愁感の強い設定、クライマックスではつかこうへいっぽい“言葉”が意味を喪失し引っ繰り返り続ける言語ゲーム感。好き嫌いはかなり分かれる所で、自分はもっと気の滅入る重い物語の方が好み。

    0

    2021/12/10 23:23

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大