時代絵巻AsH 特別公演 其ノ四『草乱~そうらん~』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 特別公演 其ノ四『草乱~そうらん~』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    観応え十分。
    日本史的にも重要な意味合いを持つ「島原の乱」を時代絵巻AsHらしい、というか大胆で独創的な解釈によって紡ぐ壮大な物語。何を書いても すぐネタバレしてしまいそう。ただ、”戦うことは勝つことではなく、大切なものを守るため”という思いが強く伝わる内容だ。
    緩急ある展開、抒情的な観せ方など、その丁寧な作劇は期待通り。そして過去公演以上に感情の揺さぶりが大きく、嗚咽する観客の多いこと。
    もちろん創作劇だから史実と違うだろうが、一揆が起きた背景(概要)、用語集、人物相関図を掲載したパンフレット(他劇団であれば販売するような豪華版)が配付されるので、上演前に一読すれば一層理解が深まる。
    (上演時間2時間30分 途中休憩15分含む)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、時代絵巻AsHらしく正面に両開き襖、廊下や縁側・沓脱石がある典型的な日本家屋作り。下手に一段高くした別スペースを設え、外観は土塀や板塀など当時の雰囲気を漂わす。
    物語の概要は、歴史の教科書のようであるが、登場人物の設定が大胆。冒頭は大阪城落城のおり、真田幸村が嫡男・大助に豊臣秀頼の子を託し落ち延ばす場面から始まる。この子が後の天草四郎として島原の乱の指導者になるという設定である。中心的な人物はこの四郎と幼馴染の子供たち、特に大助の息子・源次郎。公演は語り物を装うようだ。

    厳しい年貢の取り立てに反発した蜂起であったが、島原藩、唐津藩(大名)は、幕府から統治能力を疑われることから、キリシタン弾圧と絡め農民一揆を宗教的な反乱へすり替えようとする思惑。クルスへの唾棄、踏絵といった試金石場面が痛ましい。同時に戦国浪人の不平不満を取り込んだ、別次元の思惑も絡ませるという大胆な発想。幕閣・農民という両観点を通して、不安定な世情という社会状況をそれとなく窺わせる。

    元々はキリシタン大名の領地であった事情、両藩において先代が石高を水増して幕府に届け出ており、本来の年貢では納め切れない事情。物語は、その背景や悪政を点描し、一方 その地で暮らす農民の純朴な人柄を対比させることで、勧善懲悪といった分り易い構図を描く。歴史的にも色々な解釈がされている内容=島原の乱を演劇として面白く観せるところが見事!もっと言えば、幕藩体制が完全ではない3代将軍・家光やその側近を、あえて軽佻浮薄に描くことで武家社会の無責任を糾弾している。が、同じ幕臣でも老中・松平信綱を謹厳実直に描き、幕府内での人物像を固定化させない上手さ。立ち位置の異なる個々人の心情描写をきめ細やかに描く。

    物語の雰囲気作りは、いつもながら見事。上演前は笛・太鼓といった和楽器。物語の場面に応じて、お囃子、ピアノ旋律といった和洋の音響の使い分けで緩急ある効果を演出。照明は明暗の諧調はもちろん、葉影やクルスに模った余韻。公演全体の調和が実に上手く、そして美しいといった印象だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/09 16:42

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