天国 公演情報 タクフェス「天国」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    開演前からかなりの時間、客席を温める主催の宅間孝行氏と大薮丘(たか)氏。じゃんけん大会でプレゼントを渡し、会場中をマイクを持ったスタッフが駆け巡って子供達の声を拾う。本当に開演ギリギリまで徹底したファンサービス。日本全国を周る旅一座の貫禄。

    物語は福岡の歴史ある劇場から始まる。コロナ禍で苦境に瀕し、県に買って貰おうと相談を持ち掛けている。主演の原嘉孝氏演じる小屋主は、この世界に入る切っ掛けとなった10年前の宮城県石巻市の「山田劇場」のことを思い返す。その時は高校を中退したばかりのヤンキーで未来のことなんか何も考えてはいなかった。

    昭和の名物興行師役モト冬樹氏はシリアスな芝居の方が映える。ヤクザの大御所が似合う風格。東京からイベントの目玉として呼ぶ設定で日替わりゲストが登場。今回はDJ KOO(コー)氏だった。

    カーテン・コールはモト冬樹氏のギター演奏付きで皆が歌い踊る。NiziU(ニジュー)っぽい振付。流石ジャニーズの原嘉孝氏は断トツ目立つ。AKBの入山杏奈さんも見せるプロのダンス。曲も良く、これが一番良かった。

    ネタバレBOX

    とにかく話が物足りない。面白さの境界線を見誤っている様な進行。何となくのホームドラマに311とコロナを絡めても勿体ないだけ。311前の日常に観客をのめり込ませてこそのカタストロフィー。主人公の一人称の物語にもっと入り込ませて欲しかった。今作では入山杏奈さんに惚れただけの設定で、それでは物語の背負う喪失感には全く足りはしない。もっと挫折して傷付いて喧嘩して泣いて打ちのめされてほんの少しずつ家族を獲得していって欲しかった。その心の機微に観客が一喜一憂してからの無常な喪失こそが、虚構が現実の首に刃を突き付ける一手である筈。当たり前のようにずっと続くと誰もが疑いもしなかった日常が、今となってはかけがえのない思い出に。終演の挨拶で入山杏奈さんが311に言及しながら涙した。これを被災地で演るのは辛いだろう。

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    2021/12/05 09:38

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