マツバラQ 公演情報 グワィニャオン「マツバラQ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い! お薦め。
    演劇は、その虚構性の中に時々の社会事情などを鏡のように映し出す、同時に娯楽(性)という愉しみも提供する。この公演は、後者に重きを置きつつも、第二の人生というか遣り甲斐、生き甲斐という”人生100年時代”の喧伝を彷彿させる。可笑しみと苦みが同居し心にしっかり刻み込む公演。しかし、けっして重たくせず、何方かと言えば軽妙な感じで展開していくところがグワィニャオンらしい。
    休憩時間含め2時間10分(休憩時間7分)は、飽きさせることなく笑い笑いで演じ切る。もちろん休憩時間7分にも意味があり、役者泣かせの観客笑わせの大サービス。観客が自撮りしたくなる気持も頷ける。それは観てのお楽しみ。

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手にソファ(場面に応じて移動させる)、下手は階段上に出版社事務所で机や書棚が並ぶ。毎公演ごとにしっかりした作り込み。

    この出版社は書籍の売上減少に伴い、倒産寸前のところで買収させ、細々と社内報やフリーペーパー等を制作している。かつて歴史小説で勢いのあった時とは雲泥の差。出版業界の栄枯盛衰の中にいる古参の中年社員(おじさん5人衆)は、ダラダラとした体たらく。一方、女性社員の星野茜子(菜ノ香マカ サン)、淀川晴美(平塚純子サン)、森下あすみ(丸山有香サン)の3人のOLは、新選組の謎多き四番隊長・松原忠司の本を作ろうと意気軒高で奮闘する。しかし、かつて新選組小説でベストセラーを生み出した上司(おじさん5人衆)は乗り気ではない。彼女たちは何故 松原に惹かれたのか…上司たちの新選組愛はもう失せてしまったのか…果たして本は無事完成されるのか….。

    2020年11月の「刹那的な暮らしと丸腰の新選組」のカップリング公演のようだ。前作でもOLが新選組の魅力に取りつかれ、現在と過去(幕末)を往還して展開していくが、本作は出版までの過程を業界裏話的に展開していく。さすがに同じような展開ではなく、捻りを利かせた構成は さすがである。また劇中で「血風リトルトーキョー」(愛染終と東京ニューセレクト)を歌い、違う面でも楽しませる。

    謎の松原忠司を本にするにあたり、どのような人物であったのか。先人(子母澤寛ー新選組物語:三部作)の焼き直しではなく、独自性を出すため自ら取材・調査する姿。幕末という時代間隔を埋める逞しい想像力。出版に係る大事な要素を次々に繰り出し、制作の苦労や面白さを経験させるおじさん達。想像力喚起のためのシミュレーションシーンに殺陣等のアクションを盛り込み、劇団らしい観(魅)せ方をする。幕末・京都での新選組の活躍、しかし地味な松原忠司(主宰・作・演出 西村太佑サン)をどう魅力立てるか、といった創意工夫が見どころ。それが八千代(関田豊枝サン)との心中事件で、叙情性を売り物にする。官能小説家に執筆依頼、その描写に笑いが広がる。本当に楽しませることを知り尽くした劇団の公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2021/11/26 11:33

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大