老いと建築 公演情報 阿佐ヶ谷スパイダース「老いと建築」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    #老いと建築
    #阿佐ヶ谷スパイダース
    オープニングがまるでエンディングのような美しさで圧倒された。
    同時にその色彩が、初めて観た #長塚圭史 さんの作品の『マイ・ロックンロール・スター』を思い出させた。それはやがて、レオナルド・ダ・ヴィンチの #最後の晩餐 にも見えてくる。圧倒的に美しい美術と照明と肉体があった。
    歪み始めた家……いや家族のカタチ……関係性は、実際にそうなのかもしれないし、記憶……つまり認知の歪みなのかもしれない。老いは不条理なんだ。不条理劇は苦手で、あまり好きではなかったが、今作は不条理劇なのかもしれないと考え始めたのと同時に、その不条理の中には演劇の魅力がいっぱい詰まっているのかもしれない……と思えてきた。
    今作品は脳を刺激する。我が人生の過去、そして未来へと思考を誘う。その刺激が強いのか、テーマそのもののが比類なき刺激物なのか、思考が自分ごとに全力疾走してしまい、目の前の情景や声から乖離して迷子になった。
    齢四十歳を超えた時、人生を折り返した、終わりに向かっていくんだ、枯れていくんだというネガティヴ思考の呪縛は、まるでスクルージに巻き付いた鎖のようにワタシを締め付けていて、SEXに対するイチローの危機感に共感しながら、自分をどこかで憐れみながら嘲笑っていて滅入る。
    リボンだよの #木村美月 さんが、作品の毒素を中和させ飲み込みやすくしてくれているが、喉元を過ぎてからその辛味がヒリヒリと臓器を焼いていく。
    舞台奥で目を丸くして代わる代わる人を見比べる #藤間爽子 さんのヨシコが事の大きさを表した。可愛くて、異常さも可笑しさに包み込んだ。
    カーテンコールの表情に #村岡希美 さんの柔和なお人柄が蘇りホッとするのは、作品中の表情に鬼が潜んでいるからだ。見事に傘寿の鬼を立ち上げた。緩急の違いで40年の時間を飛び越えてみせた。
    層の厚い劇団力を改めて証明してみせた公演だった。天晴れ。

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    2021/11/14 20:17

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