オール・アバウト・Z 公演情報 ティーファクトリー「オール・アバウト・Z」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    コロナ禍の中で、さまざまな形で「人造人間」が現実化してきた。映画ではよく登場するし、小説でも今年はカズオイシグロの「クララとお日さま」や平野啓一郎の「本心」のように、人間との共存社会を正面から描いた作品も評価を受けている。その中で、演劇はチャペックのロボット初登場が戯曲作品であるにもかかわらず、あまり成功しない。ホンモノの人間が「人造人間」を演じることにうさん臭さがあって、作る方にも、見る方にも演劇の愉しみをはぐらかされるようなところがあるからかもしれない。(本物のロボットではやはり芝居にならないのは平田オリザで実証済み)
    現実に近くなればなるほど、人間との共存をあらゆる面からさまざまに考慮しなければならなくなり、それはまた、人間の築いてきた歴史・文化を総動員して思索しなければならなくなるから、現実でも架空世界でも一つの「世界」を作るのは大変な作業になる。
    しかし、それを考えなければならない場面に人類は近い将来、必ず直面する。コロナ禍はその小さな前兆だ。
    テーマはよくわかる。平田オリザが「産業」からアプローチしたのに比べるとこちらの方が深刻だ。
    舞台は・・・・
    基礎的なアンドロイドができた約三十年後、2050年代。さらに進化したアンドロイドZを創るために、人類が何をするか、というドラマである。
    正面から挑んだテーマは大きすぎたのか、結果的にあまり要領を得ないが、設定も今までのSFモノの便宜主義に比べてよく出来ている。劇作家の描く未来ものは、映画や小説と違って、結局ホンモノ人間が演じなければならない、というところから、何か大きなリアルな発見につながるかもしれない。
    小劇場出身では(小劇場のいい加減なSF仕立てはさんざん見たがろくなことにになっていない。平田オリザの試みもやってみただけ、だと思う.)この作家は構造もしかりしていてこのテーマが演劇で書ける作家だと思う。はじめからZを目指さないで、小さな素材から始めてみたらどうだろう。


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    2021/11/10 16:18

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