実演鑑賞
満足度★★★★
連載大衆小説の祖ともいうべきディケンズの代表作の舞台化だけに、曲折ある展開に飽きさせない。特に、金持ちの老人とビルサイクス、フェイギンがオリバーを奪い合う後半は、時間を感じないあっという間の65分だった。冒頭の救貧院の歌、フェイギン(市村正親)一家の「ポケットからチョチョイ」の歌など、コーラスのたのしいがっきょくもいっぱい。一方、人生の哀感の歌はフェイギンの曲「こんな年でも人生はやり直せるか」にとどめをさす。ソニンの葉すっぱだが情のある演技も素晴らしく、悪い男ビル・サイクスに「あんたのためならなんだってする」と歌うのも、その後の悲劇も含めて哀切だった。
ドラマというよりショーとしてみれば最高。その中で市村正親のユーモアと哀しみを併せ持った存在感は絶品だった。休憩込み2時間40分
天井が高く舞台袖も空いているシアターオーブの舞台機構を生かして、リアルなロンドンの街の風景や救貧院、フェイギン一味のねぐらなどをササーっと転換する。この美術も良く、とくにセントポール協会が背後にドーンと控えている場面はいい雰囲気だった。