紙屋悦子の青春【9月28日~29日公演中止】 公演情報 (公財)可児市文化芸術振興財団「紙屋悦子の青春【9月28日~29日公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    静かな演劇、というが非常に笑いも多く、その奥からじんわり人生の切なさ、悲しみが立ち上がってくる。枝元萌さんはお節介でお喋りでお茶を出すだけで笑いが起きるし、長谷川敦央は口下手の不器用ぶりで逆に笑いを起こす。人物配置もわかりやすく、それぞれの心情も痛いほど伝わる。いぶし銀の舞台だった。

    裸舞台に最初、車椅子の老夫婦が現れ、なんてことない話(寒くないか、毛布がいるか、カーディガンをとってくるか)から、思いやりと頑固さの、長年連れ添った夫婦ならではの関係性が見えてくる。「戦争、多くの奴らが死んだ。どうして俺は生き残ったんだ…」そして、戦争中へ。

    昭和20年3月30日、見合い話が持ち上がり、31日に悦子(平体まひろ)は、兄夫婦が熊本工場へ派遣された留守の家で、明石の紹介で永世(ながよ)と見合い。お茶とおはぎと弁当箱の電気回路が笑える。
    4月8日、明石が出撃前の別れにおとずれ、12日、永世が明石の遺した手紙を届けにくる。
    たった2週間のドラマ。庭の桜が蕾から満開になる間に、一つの愛が死に、新しい愛が育ち始める。
    悦子役の平体まひろのピュアで真っ直ぐな純情が切なく健気に輝いていた。休憩なし2時間

    ネタバレBOX

    特攻で死んでいった恋人がとりもった二人。普通、わだかまりがありそうだが、永世と悦子は、死んだ明石への思いは胸奥に秘めて、二人の愛を大切なものとして育てた気がする。それは小林多喜二亡き後の伊藤フジ子と森熊氏のようでもある。
    一方、映画「ホタル」の高倉健と田中裕子の夫婦は、死んだ親友・恋人を思い続けて、体の関係を持たない夫婦であり続けた。「ホタル」より、「紙屋悦子の青春」の二人の方がわたしにはこのましい。

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    2021/10/21 21:28

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