実演鑑賞
イギリスの代表的劇作家・デヴィッド・ヘアのコロナ罹病記。体験をモノローグとして書いているのを、同じ劇作家の坂手洋二がリーディングに近い形で読む。
体験記だが、劇作家だけあって、罹病の経緯など生々しく実感でき、さらにこの病(悪魔)に打ち勝つための周囲の人間の取り組みまで冷静に見ているところがいい。政治家(保守系首相ジョンソン)に辛らつだが、それも客観性を失っていない。
ロンドンでは、昨年の秋このモノローグドラマを九百人規模の劇場を三分の一の席にして上演。今もレパートリーにしているとウイキには出ているから、ロングランになっているらしい。ヘアは俳優もやるいわば演劇界有名人だが、本人がやっているわけではない。知名度のある俳優が演じ演出家もついている。
こちらは坂手洋二の演出,出演。坂手もたまには芝居にも出ている。小劇場での実績も承知しているからリアリティはある。しかし、日本の劇作家でも、もしくは俳優でも、一人くらいはこう舞台でこういう手の実感モノローグを聞かせてくれてもいいのではないか(。かって、谷賢一の同工異曲を見て相当がっかりしたことがある)。社会の、差別と偏見へのモノ言わぬ深さがやはりこの国は深いと実感させる公演だった。55分。